経営者のための女性力活用塾(第9回)女性活用の問題意識は20年以上前から変わっていない

人材活用

公開日:2017.06.21

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 1995年2月、「社団法人経済団体連合会女性の社会進出に関する部会」が「女性力活用のための男女の働き方」をテーマにしたレポートを発表しました。これは社会環境・会社の姿勢・男女会社員のそれぞれの立場から見る働き方の模索や自己変革について述べられたレポートです。

 この中には、1年半にも及ぶ議論や合計約2000人の会社員(経営者・人事部長・一般社員など)を対象にしたアンケート調査などが含まれており、約20年前がどのような社会であったのかを知る上で非常に有効な資料の1 つとなっています。

職場に渦巻く女性の声なき不満

 レポートを読むと、バブル経済が崩壊し「失われた20年」のスタート地点からすでに今と同じような懸念があったことが分かります。経団連は20年も前から「すでに社会は成熟し、停滞し、衰退を始めている。その流れを打開するためには、社会と会社と会社員がそれぞれ旧態依然とした過去から脱却し、柔軟な思考と対応が必要だ」と言っていたのです。

 ここで特筆すべきは、当時から「男女の働き方の差と不公平」「(男性社員の)性別へのこだわりによる女性社員の扱いの不備」「女性力活用における硬直した企業風土・社会通念・個人の思考」といった内容を中心に、さまざまな面で「女性力活用」の重要性を強調していたという点です。

 このように「女性力活用が現状脱却のカギ」という論点が20年前から存在していたにもかかわらず、今も変わらず多くの企業は「女性力活用が現状脱却のカギ」と言い続けていることに苦笑いを禁じえません。

 続いて、同レポートの中心論点を抜粋してみましょう。同レポートは、女性力活用時に見られる主な障害として以下の6点(表1)を挙げています。これを簡単にまとめると表2のようになります。

(表1)20年前の男女の労働環境「男女がはつらつと働くうえで存在する障害」

1.「男性は仕事、女性は家庭」という画一的な性別へのこだわりの意識と制度
2.社員の同質性と暗黙の了解を前提とした会社での指示やコミュニケーション
3.ライフステージに応じた働き方や働き手の多様性を考慮しない会社中心の風土
4.育児・介護を十分にバックアップしえない社会の仕組みや「保育に欠ける自動を行政が措置する」福祉概念に立つ保育所
5.育児・介護休暇などの会社の制度があっても活用できない状況
6.労働基準法の女性保護規定、税制や社会保障などといった制度や習慣の硬直性

出典:経団連レポート「社会が変わる、会社も変わろう、男女の働き方を変えていこう(1995年2月8日)」一部抜粋、加筆修正

(表2)表1から導き出される女性力活用における主な障害

1.   日本独特の「男尊女卑意識」
2&5.上記1によってつくられた「企業風土」
3.   硬直化した企業風土の「非柔軟性」
4&6.社会的・法律的な「制度の整備不足」

 この(表1)の中の、4および6についてはすでに説明したように頻繁な法改正・制度の拡充が行われているため、この点は20年の間に改善してきているといえるでしょう。しかしその他の項目は、現在の論点といっても遜色ないほど変わっていません。

 後述しますが、これらの警鐘・警告を迅速に捉え、改善し、積極的に女性力活用を推進したことで業績やイメージを飛躍的に伸ばしたエクセレント・カンパニーは数多く存在します。

 しかし、それらの企業とは対極に位置する「旧態依然とした男性主権の企業風土を頑なに維持している企業の数」は、改善を果たした企業の数を大きく上回っています。そしてそうした意識から脱却できない経営者や企業が、20年以上同じ課題に直面し、同じ議論を繰り返し、結果として同じ状態を維持し続けているのです。

 脱却できない理由はいうまでもなく、「江戸時代から続く男尊女卑意識」が心の中に染み付いているからにほかなりません。男性社員、特に経営者が性別へのこだわりやプライドに固執し続けている限り、その企業はさらに20年後も同じ悩みを持ち続けるであろうことは想像に難くありません。

無言の圧力に悩む女性社員と経営者…

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執筆=坂本 和弘

1975年栃木県生まれ。経営コンサルタント、経済ジャーナリスト。「社員の世代間ギャップ」「女性社員活用」「ゆとり教育世代教育」等、ジェネレーション&ジェンダー問題を中心に企業の人事・労務問題に取り組む。現場および経営レベル双方の視点での柔軟なコンサルティングを得意とする。

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