ビジネス課題を創造的に解決するデザイン・シンキング(第7回)

生活空間を意識したモノ作りを進めるパナソニック

2017.07.04

クリップについて

 デザイン・シンキングもしくはデザイン思考として知られる手法について、具体的な事例を基に解説する連載の第7回はパナソニックの事例です。斜めドラム洗濯機の開発に当たり、デザインを一新し、キューブ型のフラットでスクエアなフォルムにこだわりました。その背景には、ユーザーの生活空間を意識したものづくりの姿勢があります。

CASE STUDY 04 パナソニック
スクエアを意識した斜めドラム洗濯機「キューブル」の開発

生活者の新しい空間にマッチする新しいデザイン

パナソニックは今まで以上にユーザーの生活動向に密着。デザイン部門が開発プロセスの上流過程から深く関わって企画・提案して斜めドラム洗濯機を開発。デザインと品質を両立させた新構造の製品を作り上げた。

「ふだんプレミアム」と呼ぶ独自の市場を創り上げた

生活者のサニタリー空間にマッチさせるため、従来の丸形ではなく、四角形のキューブ型にしている。洗濯物の投入口も広くなり、使いやすくなった

 大手家電量販店の洗濯機売り場でひときわ目を引く製品がある。パナソニックが2015年11月に発売した斜めドラム洗濯機「Cuble(キューブル)」である。通常の斜めドラム洗濯機といえば、文字通り洗濯物の投入口の形状が斜めになっているが、キューブルの外観は、製品名にも由来する四角形(キューブ型)になっている。

 フラットなスクエアといった印象なので、外観だけでは斜めドラム洗濯機とは見えにくいかもしれないが、扉を開けるとドラム部分は斜めだ。このキューブルが発売半年後の2016年半ばには国内の斜めドラム洗濯機市場の約1割を占めるまでに急伸長した。

 実はこの製品は、今まで以上にユーザーの生活動向に密着。パナソニックのデザイン部門が開発プロセスの上流工程から深く関わって企画・提案したものだった。

 「斜めドラム洗濯機は当社が初めて発売した製品。それ以来、多くの改善を重ねて新製品を投入してきた。今回の製品は2013年から構想しており、社内で毎年開催されていたデザイン提案の中から、当時の事業部門トップの目に留まった。それがキューブルの原型だった」(パナソニックのアプライアンス社デザインセンター第1開発部MA3課の有村敬三・課長)

 ヒットの秘密は、独特なキューブ型のデザインだろう。洗濯機を設置している住宅の洗面台回りは最近、従来の曲線を多用する空間よりも、直線的でシンプルな空間になってきている傾向があるという。そうしたスクエアな場所に、従来の斜めドラムの丸みを帯びた外観がイメージ的に合わないと判断。キューブルではこれまでの外観を一新し、四角形にした。

 しかも製品の表面の凹凸を極力、抑えている。操作パネルの表示は通常は見えないが、電源を入れると光で浮かび上がる仕組み。洗濯機を設置するサニタリー空間と違和感がないようにデザインしている。

 一方で生活者の目線で使いやすさも重視し、改良を重ねている。例えば同社の従来製品と同じ斜め10度に傾斜したドラム槽を活用しながら衣類の出し入れが簡単になるように、投入口の大きさを従来の直径350mmから420mmに広げたり、高さも以前より83 mm上げたりしている。大きさや高さを改良しても、本体の大きさは同じだ。

 パナソニックは家電の販売キャンペーンとして「ふだんプレミアム」をテーマに掲げ、「なんでもないふだんを、宝物にしよう。」と打ち出している。キューブルもふだんプレミアムの一環としてユーザーに訴求しており、洗浄力といった洗濯機が備える機能価値に加え、サニタリー空間の多様化に応じた「空間価値」をアピールした結果が奏功したといえる。

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連載記事≪ビジネス課題を創造的に解決するデザイン・シンキング≫

執筆=日経デザイン編集部 大山 繁樹

執筆=日経デザイン編集部 大山 繁樹

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