読書でビジネス力をアップする(第56回)

脳の中にいる「獣」と「調教師」を飼いならせ!

2020.01.09

クリップについて

ヤバい集中力
鈴木 祐 著、イラスト/牛木 匡憲
SBクリエイティブ

 集中力を発揮する本です。情報社会の現代で最強の資産は集中力であるとして、その鍛え方を教えます。気合や精神力ではありません。科学的根拠に基づき、メカニズムを解明しながらアプローチします。

 本書では、人間の脳には主に2つの力があるとしています。すなわち、本能に基づく「獣」と理性に基づく「調教師」です。これらを上手に操ることで、超スピードの「はかどり」が手に入るといいます。

 読めば、人の心の仕組みが分かり、正しく運用できるようになります。結果、脳がコントロールできるようになります。トラブルが起きても、高レベルで集中力が維持できるようになると解説しています。

 一般的には、集中力の維持は困難です。仕事や勉強に手がつかず、先延ばしにしてしまった経験は、私を含めて誰にでもあるはずです。そのときは、意志の弱さに落ち込み、自信を喪失するものです。

 著者は、先延ばしの原因は怠け者だからでなく、心のメカニズムを知らないからだといいます。誰もが「集中力」を持っており、大事なことはその生かし方だといいます。本書は、その方法を教えてくれます。

 最大の特徴は、科学的であることです。あおり系のタイトルに反して、内容は科学的です。参考文献も半端な数ではありません。サイエンスライターである著者の真骨頂といえます。

 ライフハックも充実しています。缶コーヒーの上手な摂取方法や、朝イチに着手すべきタスクなど、集中力を加速させるテクニックがエビデンス付きで45個も紹介されています。

 やるべきことにとりかかれない人や、始めてもすぐ誘惑に負けてしまう人、疲れやすく集中が続かないという人など、もっと力を発揮したいビジネスパーソンに広くオススメします。

集中力を手に入れることは“真の自由”を手に入れることだ

 著者は「集中力が高い人は、IQが高い人よりも収入が多く、健康で幸せになれる」と言っています。しかし、それはますます難しいことになっています。誘惑源が多いからです。例えば、スマホは仕事や勉強のツールとして定着しましたが、そこにはゲームやSNS、動画など誘惑源が同居しています。

 かつての受験生は、集中したいときは、マンガやテレビ、ゲーム機から遠ざかっていればよかったのですが、今や勉強にさえスマホは不可欠です。遠ざけることができません。

 結局、自分の集中力に頼るしかありません。しかし、気合や精神力ではとてもカバーできません。だからこそ、集中のメカニズムを知り、上手にコントロールするテクニックが必要なのです。

 もちろん「誘惑に身を任せて自由に生きる」という選択肢もあるでしょう。これに対する本書の主張は秀逸で共感できます。すなわち「誘惑に身を委ねて手に入るのは、偽りの自由だ」というのです。

 例えば、欲望のまま食べ過ぎたり、飲み過ぎたりすれば、病気になります。ショッピングや賭け事にハマれば、経済的に破綻します。結局、自由を奪われます。自由は節度があるから手にできるのです。まして、現代は油断すれば誰かに操られてしまう時代です。テレビを見ても、スマホを見ても、マーケティングの専門家たちが知恵を絞って、人間の心理を探究し、誘惑しようと試みています。

 結果、自由に生きているつもりが、他人に操られ、時間やお金を吸い取られてしまいます。専門家は、日々探求を怠らず、手口はさらに巧妙化しています。気を付けないとますます取り込まれます。

 結局、他人に操られたくなければ、自分の手綱は自分で握るしかないのです。そのために必要なことが本書に書いてあります。つまり、本書にあるのは、真の自由を手にするノウハウなのです。

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執筆=藤井 孝一

執筆=藤井 孝一ビジネス選書WEB

ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。

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