読書でビジネス力をアップする(第58回)

伝えるスキルについて“先達の知識と知恵”が網羅

2020.03.05

クリップについて


スピーカーズ・コーチ 誰でも伝え方がうまくなる60の秘訣
グラハム・ショー 著、斉藤 裕一 訳
CCCメディアハウス

 伝え方の本です。プレゼンなどで正しく効果的に伝えるために必要なアイデアやテクニックが、準備や練習、実践の3つの段階に分けて書いてあります。

 本書を読んで練習すれば、人前で話す力を高めることができます。その結果、契約が取れるなど、仕事の成果が得られます。さらに、組織の変革などもできるようになるはずです。もちろん本書の内容は、スピーチやプレゼンなど、改まった機会にだけ有効なわけではありません。伝え方の原則は同じですから、雑談、日常会話、対面の説得など日常的にも応用できます。

 成功したいなら、とにもかくにも伝え方を磨くことです。ビジネスはコミュニケーションだからです。そんな、伝え方を高める上で必要な要素が本書には「60の秘訣」として書かれています。

 例えば、「最初の30秒で関心を引きつける方法」や「次のスライドを早く見たいと思わせるコツ」「質疑応答への対応の仕方」「効果的な締めくくり」などです。すぐに実践できるものばかりです。

 言うまでもないことですが、伝え方を鍛える方法は、1つではありません。人によっても、話の内容によっても変わってきます。本書には、さまざまなアイデアが詰まっていますから、自分や内容に合うやり方が選べます。どう読むかも、読者に委ねられています。最初から順番に読んでもいいですし、関心ある部分だけを拾い読みしても有効です。自分の学びのスタイルに応じて変えればいいと思います。

 というわけで、仕事柄スピーチやプレゼンなど伝える機会が多い人はもちろん、雑談、日常会話、交渉などを磨きたい人など、伝え方を磨きたいすべてのビジネスパーソンにオススメします。

子どもの頃に学ぶ機会がなかった“伝え方”を網羅した本

 伝え方は、相手の第一印象を大きく左右します。伝え方が上手なら、優秀に見えます。反対に下手だと無能に見えます。ビジネスにおいて、第一印象は重要ですから、誰もが伝え方を学ぶべきです。

 しかし、著者も指摘する通り、話し方は「生まれつき」と思われがちです。確かにそういう側面も否定しません。でも、実際は、多くの人が努力でうまくなっています。

 私自身も話下手でした。今も自信がありません。でも、仕事柄必要に迫られました。特に、独立してからは話せなければ食べていけませんでした。だから訓練しました。死活問題だったのです。その経験からも分かるのですが、話し方の習得は簡単なことではありません。何より、我々は子どもの頃に、伝え方をきちんと学んでいません。だから、つい我流でやって遠回りをしがちです。

 そんな遠回りを避けるには、まずは先達の知識と知恵を借りることです。本書には、それが詰まっています。読んで気に入ったものを実践すれば、上達の最短距離を進めるはずです。本書が優れているのは、伝え方の向上に必要なことが網羅されている点です。本書を読めば、伝え方に関しては、他の本は読まなくていいとさえ言えそうです。

 ただし、読み物的な要素は全くありません。どちらかといえば、マニュアルに近い本です。読んで興奮したり、感動を覚えたりすることはまずありません。それでも、本書のやり方に従って準備、練習さえすれば、確実に上達します。

 また、内容が網羅的なため、自分の伝え方のチェックリストとしても使えます。とにかく、伝え方の向上に必要なのは、練習、準備、実践です。本書を手元において、話す機会があるたびにそれらを参照し、確認しながら進めれば、話し方は見違えるようになると思います。

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執筆=藤井 孝一

執筆=藤井 孝一ビジネス選書WEB

ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。

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