読書でビジネス力をアップする(第65回)

「だます人を作らない技術」を知能犯担当刑事に学ぶ

2020.10.01

クリップについて

元知能犯担当刑事が教えるウソや隠し事を暴く全技術
森透匡 著
日本実業出版社

 ウソや隠し事の暴き方です。相手の本心や真実を見抜く技を元刑事が教えてくれます。刑事が実際に使っているテクニックをビジネスの現場でも活用できるように解説してくれます。著者は、元警部で、詐欺・横領・贈収賄事件などを扱う知能・経済犯担当の刑事を約20年経験してきたということです。今は独立し、そのスキルと知識を生かして講演・企業研修を行っています。

 相手の隠し事を見破って真実を聞き出す技術を、刑事の世界では「落とし方」と呼ぶそうです。本書はそれをビジネスで生かすことを指南しています。残念ながら、ウソや隠し事に対応せざるを得ない機会は少なくありません。職場の部下や同僚、取引先はもちろん、家族に対してさえ、対応せざるを得ないことがあります。

 本書には、その有効な方法が書いてあります。相手に反省させて真実を語らせる方法ですから、ウソに限らず、不満やホンネを引き出したり、指導したりする際にも有効です。

 内容は、極めて実践的です。ウソや隠し事を暴く方法にとどまらず、そのために不可欠な信頼関係の築き方、証拠の収集や活用法に至るまでを解説しています。ビジネスへの活用法では、ケースをいくつも例示して解説します。

 著者いわく「刑事はコミュニケーションの専門家」ということです。確かに本書のテクニックも、段階的な自己開示、返報性の活用、身だしなみに注意など、ビジネスでもおなじみの手法ばかりです。企業の経営者や幹部社員、リーダーやマネジャー、人事担当者はもちろん、学校の先生や子どものいる親世代など、広く人に接する立場の人におすすめします。

ウソを見破るスキルはだます人を作らない技術ともいえる

 それにしても、世の中には、平気でウソをつく人がいるものです。ビジネスをしていれば、そういう人とも一定の確率で対峙せざるを得ません。何事にも「性善説」というわけにはいきません。実際、採用活動などをしていると、経歴詐称などは普通にあります。前職を円満退社のはずが、実は懲戒解雇されていたとか、キャリアの空白期間は、病欠や収監だったというケースさえあります。

 ウソではなくても、隠し事は普通にあります。誰しも、自分に都合の悪いことは、自分からは言いません。当人にすれば「聞かれなかったから答えなかった」ということだと思います。そうしたウソや隠し事を見落としたまま、不適切な人を組織に入れてしまえば、組織をむしばみます。特に、小さな会社では、そのインパクトは計り知れません。致命的とさえいえます。

 取引でも、詐欺まがいの話を持ちかけられることは少なくありません。特に、起業してすぐは、見ず知らずの人からその手の話が持ちかけられました。彼らは、不慣れな経営者を探して狙い打ちしているのです。独立したばかりの人の相談に乗っていると、今も同じような被害に遭っている話を聞くことがあります。

 厄介なことに、ウソつきほど人当たりがよかったりします。だから、油断していると、すぐに信じてしまいます。最初は「向こうから来るよい話は基本詐欺」くらいでちょうどいいかもしれません。だまされたとき、誰が悪いのかといえば、見抜けなかった自分も悪いのです。一方で「だますくらいならだまされる方がいい」などとうそぶく人もいますが、それは間違いです。

 ウソを見抜けず、だまされてしまえば相手は詐欺師になります。社員も同じで、不正できる環境を作るから、彼らを犯罪者にしてしまうのです。ウソをつかせる脇の甘さ自体も罪なのです。そう考えると「だまされない技術」は「だます人を作らない技術」ともいえます。にもかかわらず、なかなか学べないスキルでもあります。まずは本書を手に取って、学んでみることをおすすめします。

SID : 00005066

執筆=藤井 孝一

執筆=藤井 孝一ビジネス選書WEB

ビジネス書評家、読者数5万人を超える日本最大の書評メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』の発行人。年間1000冊以上の書籍に目を通し、300冊以上の書籍を読破する。有名メディアの書評を引き受けるほか、雑誌のビジネス書特集でも、専門家としてコメント。著書は『読書は「アウトプット」が99%』(知的生きかた文庫)のほか、『週末起業』など、累計50冊超、うちいくつかは中国、台湾、韓国でも発刊されている。

連載記事≪読書でビジネス力をアップする≫

PAGE TOP

閉じる
会員登録(無料) ここでしか読めないオリジナル記事が満載
閉じる