トップインタビュー(第45回)他の追随を許さない、技術を磨き続ける椿本チエイン

経営全般

公開日:2019.06.28

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椿本チエイン代表取締役社長兼COO 大原 靖 氏

「グローバルトップ」「ニッチトップ」の大切さを語る大原社長

椿本チエインは、チェーンをはじめとした動力伝動部品、搬送・輸送機器など幅広い分野で世界中の「動く」を支え続けてきた。自動車のエンジン、エスカレーター、駅のホームドア、回転ずしのコンベヤなど、実物を目にすることはほとんどないが、同社の製品は私たちの生活の至る所で使われている。産業用スチールチェーンなどで世界トップのシェアを持つ同社の経営について、代表取締役社長兼COOの大原靖氏に話を伺った。

――御社の製品は私たちの身近な所にありますが、製品の性質から椿本チエインの名前を知らない人も多いと思います。まず、概要を簡単にご説明いただけますか?

 創業は1917年で、自転車用チェーンの製造を始めたのが会社の始まりです。現在は、産業用チェーンを作る「チェーン事業」、自動車エンジンのタイミングチェーンなどを作る「自動車部品事業」、減速機や直線作動機、クラッチなどを作る「精機事業」、工場の生産・物流の搬送システムなどを作る「マテハン事業」の4つの事業を中心にビジネスを展開しています。

――産業用スチールチェーン、自動車用タイミングチェーンで世界トップシェアを持つなど御社は世界から高く評価されています。それを成し遂げた御社のモノづくりの背景にあるものは何でしょうか?

 2017年の創業100周年を機に、私共の理念を見直し、「TSUBAKI SPIRIT」としてまとめました。その中に「リスクを恐れず一歩踏み出し、変革とチャレンジを。」という言葉があります。これこそが、創業から今に至るまで受け継がれてきた弊社のDNAです。

 弊社の歴史は1917年、創業者の椿本説三が自転車用チェーンの製造を手掛けたことに始まります。当時は、日本で自転車が急速に普及し始めた時代。創業当初は競合も少なかったのですが、しばらくすると雨後のたけのこのようにチェーンメーカーができてきました。供給過剰になって価格は暴落しました。

 そこで創業者が注目したのが紡績機械でした。紡績機械には自転車より大きなチェーンが使われていたことを思い出したのです。日本の産業が発展し、機械化が進むと見た創業者は、自転車チェーンの製造から機械用チェーンの製造に事業を転換します。1928年のことです。競争が厳しくなっていたとはいえ、自転車用チェーンの製造から手を引き、それまで手掛けたことのない機械用チェーンに特化するのは大きな決断だったと思います。しかし、この挑戦が躍進につながりました。

――紡績業は日本の近代化をけん引し続け、1930年代には綿織物の輸出量が世界一になりますから、椿本説三氏の先を見通す力が光ります。

 先見の明だけでなく、決断する力があったことも素晴らしいと思いますね。戦後、自動車エンジン用チェーンの製造を開始したことも会社にとって大きなターニングポイントでした。自動車のエンジンで使われるタイミングチェーンは、それまで輸入に頼っていました。しかし、輸入すると当然コストがかさみます。そこで1954年に大手自動車メーカー2社から相次いで「国産化できないか」との打診があったのです。

 自動車メーカーからサンプルとしてもらったチェーンは、ピッチ(チェーンのピンとピンとの間の長さ)が短く、弊社ではそれまで手掛けたことがない種類のものでした。しかし、これから日本にもモータリゼーションの波が来ると見て、挑戦を決断します。

――1960年代以降のモータリゼーションの進展を知っている今から見ると当然のことのように思ってしまいますが、当時は簡単な決断ではなかったでしょうね。

 そう思います。開発には時間がかかりますし、設備投資も必要です。もちろん人的リソースも割かなければなりません。いろいろな面で負担がかかります。しかし、ここをチャンスと見て挑戦することにしたのです。

 量産化を含めた技術的課題をクリアし、3年後の1957年に自動車エンジン用のタイミングチェーンを初めて納入。翌1958年から量産体制に入りました。その後の進展は、みなさんもご存じの通りです。日本にもモータリゼーションの波が訪れ、自動車の生産台数は飛躍的に伸びていきました。それに伴いエンジン用タイミングチェーンの需要も増え、1980年には月産100万本を記録するまでになりました。

――御社の変革・チャレンジの歴史について伺ってきましたが、最近の変革やチャレンジにはどのようなものがありますか?

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大原 靖 (おおはら・やすし)

1959年生まれ、神戸商船大学(現:神戸大学 海事科学部)卒業。1982年椿本チエインに入社し、海外事業部に配属。椿本シンガポール社長、執行役員社長室長兼経営企画室長、取締役を経て、2015年6月に代表取締役社長兼COOに就任。

【T】

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