弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第67回)

慌ててテレワークを導入、法律対応が必須

2020.04.13

クリップについて

 2020年4月7日、新型コロナウイルス対策として、政府による新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法に基づく「緊急事態宣言」(同法32条)が出されました。そして、対象地域においては、法的根拠に基づく外出の自粛が要請されるに至りました。また、それに先立ち東京都では、ウイルスの感染拡大防止のため、「テレワーク、時差通勤、在宅勤務」が奨励されています(3月23日都知事会見)。

 テレワークとは、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務のことをいい、(1)在宅勤務(2)サテライトオフィス勤務(3)モバイル勤務の3つの形態があります。テレワークは働き方改革の一環として、近年、導入を進める企業が増えてきました。しかし、この状況下で、制度は未整備なまま、急に導入することになった企業が少なくないでしょう。

 そこで今回は、テレワークを導入・実施する場合の法務上の留意点について、厚生労働省の「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(以下:「ガイドライン」)、「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」(以下:「Q&A」)、「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」(以下:「手引き」)などを参考に解説します。

 テレワークを行う労働者にも、労働基準法をはじめとする各種労働基準関係法令が適用されます。導入・実施に当たっては、これらの法令に違反してはなりません。またテレワークは、労働時間の管理が難しい、仕事と仕事以外の切り分けが難しい、長時間労働になりやすいなどの問題点が指摘されています。実施に当たっては、こうした点について適切な労務管理を行うことが鍵になります。

テレワーク導入に際しての基本的な留意点

 テレワークを導入するに当たっては、最初に社内の基本方針やルールを定めておく必要があります。「Q&A」には、次の手順が挙げられています。急に導入することになった企業は、この手順を踏むことが難しかったケースもあるかと思いますが、導入後になったとしても、少なくとも【2】は至急、実行する必要があるでしょう。

【1】テレワークの対象業務と対象者の範囲を決定する
 このうち、対象業務は、テレワークで実施しやすい業務(入力作業、データの修正・加工、資料の作成、企画などを思考する業務など)を選定します。対象者は、周囲の理解を得られるよう明確な基準を設けることが重要です。

 また、個々の労働者がテレワークの対象となる場合であっても、実際にテレワークをするかは、本人の意思によるべきとされます。ただし、就業規則などにテレワークを命じる規定があれば、本人の意思にかかわらずこれを命じることができると考えられます。

【2】就業規則などにテレワークに関する規定を定めておく
 テレワークを導入する場合、労働者が常時10人以上の会社では就業規則にテレワークに関する規定を定めておくことが必要です(労働基準法89条)。

 具体的には、下記の3項目について定めておく必要があります。

<1>在宅勤務などテレワークを命じることに関する規定(10号参照)
<2>在宅勤務などテレワーク用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定(1号参照)
<3>通信費などの負担に関する規定(5号参照)

 これらの規定は、就業規則に直接規定する場合と、「テレワーク勤務規定」といった個別の規程を定める場合があります。

 後者の場合には、就業規則の「適用範囲」に関する規定に「従業員のテレワーク勤務(在宅勤務、サテライトオフィス勤務及びモバイル勤務をいう。以下、同じ)に関する事項については、この規則に定めるもののほか『テレワーク勤務規定』に定めるところによる。」などと就業規則に委任規定を設けることにより、「テレワーク勤務規定」に就業規則と同様の効力を持たせることができます。

 なお「手引き」には、モデル「テレワーク就業規則」(在宅勤務規程)が掲載されていますので、これからテレワークの導入を急ぐ企業は、 これをカスタマイズして活用することをお勧めします。

【3】テレワーク利用者とオフィス勤務者とのコミュニケーションの方法について取り決めておく
 あらかじめ通常時または緊急時の連絡方法について、労使間で取り決めておくことが望ましいとされます。

【4】テレワーク導入に当たっての教育・研修を実施する(テレワーク利用者だけでなく、上司・同僚にも行う)
 教育・研修によって、テレワークの実施目的などについての認識を共有するとともに、テレワーク実施時の不安や疑問を解消することができます。

 上記の順に従って取り決めた基本方針やルールについては、労使間で認識に齟齬(そご)が生じないよう、あらかじめ導入目的や対象業務、対象者の範囲、テレワークの実施方法などについて、労使委員会(労働者側は、労働組合がある場合には労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者が参加)などで十分に協議した上で、これを文書に保存するなどの手続きを経ることが望ましいとされます。

 さらに作成した文書は、社内に周知するため配布することが望ましいと考えられます。これらについても、急な導入時には対応できなかったとしても、できるだけ早く対応するようにしましょう。

 就業規則に直接規定する場合も、「テレワーク勤務規程」などの個別の規程を定める場合も、テレワークに関する規程を作成・変更したときには、所定の手続きを経て、労働者代表の意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出ることが必要です。

 以上に加え、労働契約を締結している者に対して新たにテレワークを行わせる場合には、就業の場所として「労働者の自宅」などと明示した書面を交付する必要があります(労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条第1項第1の3号)。また、テレワークの実施と併せて、始業および終業の時刻の変更などを行うことを可能とする場合には、労働者に対し、その旨の明示をしなければなりません(労基法施行規則第5条第1項第2号)。

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執筆=上野 真裕

執筆=上野 真裕

中野通り法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)
平成15年弁護士登録。小宮法律事務所(平成15年~平成19年)を経て、現在に至る。主な著作として「退職金の減額・廃止をめぐって」「年金の減額・廃止をめぐって」(「判例にみる労務トラブル解決の方法と文例(第2版)」)(中央経済社)などがある。

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