弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第71回)

セクハラ防止強化の法改正、対応すること総まとめ

2020.08.17

クリップについて

 職場におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主への相談などを理由とした不利益取扱いの禁止などを新たに定めた改正男女雇用機会均等法が、本年6月1日から施行されました。

 セクシュアルハラスメントなどのさまざまなハラスメントは、働く人の能力が十分発揮されることを妨げ、個人としての尊厳や人格を傷付け、企業にとっても、職場秩序の混乱、業務への支障、人材流出、社会的評価の低下などの問題を生じさせるものであり、その防止対策は極めて重要です。

 セクシュアルハラスメントについては、早くからこの点について認識され、他のハラスメントと異なり、既に2006年の男女雇用機会均等法改正により、職場における性的な言動に起因する問題への対応について、事業主に雇用管理上の措置義務を課してきました(第11条第1項)。

 しかしながら、セクシュアルハラスメントについて事業主に相談したことなどを理由とする不利益取扱いの禁止や、取引先など他社の労働者との間で生じたセクシュアルハラスメントについての規制がないなど、その実効性において不十分な点がありました。

 そこで今回、男女雇用機会均等法を改正し、これらの点を含めたセクシュアルハラスメント防止対策の強化が図られました(第11条第2項3項など。なお、同法第11条の3、育児・介護休業法第25条において、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについても、ほぼ同様の改正がなされています)。

 以下では、厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)のパンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!~~セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対応をお願いします~~」(以下:パンフレット)を参考に、同法の定めるセクシュアルハラスメントの定義や主要な改正点を概観し、それらを踏まえ事業主が講じなければならない措置について見ていきます。

職場におけるセクシュアルハラスメント

 職場におけるセクシュアルハラスメントには、以下の2つの類型があります(男女雇用機会均等法第11条第1項、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(以下、指針といいます)」参照)。

<Ⅰ>対価型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること。例えば、事業所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇する場合です。

<Ⅱ>環境型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が害される(=労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じる)こと。例えば、以下のような場合です。

(ⅰ)事業所内において上司が部下である労働者の腰や胸に度々触ったため、その労働者が苦痛に感じ、就労意欲が低下した

(ⅱ)労働者が抗議をしているにもかかわらず、同僚が業務用のパソコンでアダルトサイトを閲覧しているため、それを見た労働者が苦痛に感じて業務に専念できない

 「労働者の意に反する性的な言動」や「就業環境が害される」に該当するかは、労働者の主観を重視しつつも、事業主の措置義務の対象になることから、一定の客観性が必要とされます。具体的には、女性労働者が被害を受けた場合には、「平均的な女性労働者の感じ方」が基準とされます。

 セクシュアルハラスメントが行われた場合、直接の加害者や事業主は、被害者から損害賠償責任を問われます(民法第709条、715条)。ただし、事業主は、後掲の指針に従った雇用管理上の措置を十分に講じていれば、その責任を免れる場合があると考えられます。

セクシュアルハラスメントに関する主要な改正点… 続きを読む

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執筆=上野 真裕

執筆=上野 真裕

中野通り法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)
平成15年弁護士登録。小宮法律事務所(平成15年~平成19年)を経て、現在に至る。主な著作として「退職金の減額・廃止をめぐって」「年金の減額・廃止をめぐって」(「判例にみる労務トラブル解決の方法と文例(第2版)」)(中央経済社)などがある。

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