人生を輝かせる山登りのススメ(第17回)

山に縁のある、オモシロ言葉

2016.11.24

クリップについて

 山についてのさまざまな話題を紹介する「人生を輝かせる山登りのススメ」、第17回は、山に関連した面白い言葉をいくつか紹介しましょう。

物見遊山

 紅葉が進み、すっかり市街地まで下りてきました。この秋は美しい紅葉を楽しみに、物見遊山へ出掛けた方も多いのではないでしょうか?野山へ気分転換で遊びに出掛けることを「物見遊山」といいますが、もともとは仏教用語です。修行を終えた僧がさらなる修行のために、他の山(寺)へ行くことを意味します。

 例えば「比叡山延暦寺」、「高野山金剛峯寺」のように、寺院には○○寺という名称のほかに、山号という称号を持っています。どうして寺院に山号があるのでしょうか。仏教は大陸から渡ってきた信仰ですが、それ以前にあった土着の信仰とも結び付いたと考えられています。その1つとして、日本古来の山岳信仰も大きく影響したとも。

 寺院は修行の場所としてふさわしい山の上に建てることが多く、寺名と山名(山号)の両方で呼ばれるようになったのですね。ちなみに山号は、実際にある山の名前とは関連性がないこともあります。

胸突き八丁

 さて、そんなお寺のお坊さんも走るといわれる師走が間近となり、これから何かと忙しい時期となります。担当している仕事が納期を迎え、「胸突き八丁」に差し掛かる人もいるかもしれません。物事の正念場、がんばりどころの意味を持つ「胸突き八丁」という言葉は、富士登山が由来だということをご存じですか。

 登ったことのある人は、よく分かると思いますが、富士山は山頂に近づくほど傾斜が強まり、空気も薄くなって、登るのがキツくなります。特に八合目からが難所で、次の一歩を踏み出すのもつらいほど。山頂を目前にリタイアする人が多いのもこのためです。このように、山頂まであと八丁(一丁が約109mなので、八丁は約872m)の登りが胸を突くように苦しいということからきているのです。

 そこで、山頂まで872mがどの辺りなのかを、国土地理院の電子国土WEBの地形図で計測してみたところ、八合目の上部、「本八合目 胸突江戸屋(上江戸屋)」と「御来光館」の間でした。

 「胸突き八丁」は、富士山の信仰登山が大流行した江戸時代には使われていた言葉と想像しますが、今も昔も、富士登山の苦しさは変わりないのかもしれませんね。

かみさん… 続きを読む

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執筆=小林 千穂

執筆=小林 千穂

山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どものころに山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、現在はフリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』『ワンダーフォーゲル』など登山専門誌に多数寄稿するほか、山番組にも出演。著者に『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)などがある。2014年に南米のチンボラソ(6310m)に登頂。

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