人生を輝かせる山登りのススメ(第60回)

登山道具のお手入れ:シームレステープの張り替え

2020.05.15

クリップについて

 新型コロナウイルス対策の外出自粛要請は山の世界にも大きな影響を与えています。4月20日には山岳4団体から山岳スポーツ愛好者に自粛を求める声明(※)が出され、この記事を執筆しているGW中も、どこにも出掛けず自宅で過ごしているアウトドアファンが多いことでしょう。
※http://www.jfmga.com/pdf/sangaku4dantai_seimei.pdf

 新緑や花々がきれいで、陽気もいいこの時期に山へ行けないのはとてもつらいことです。でも、家にいる時間の長い今こそ、山道具の集中メンテナンスをするチャンス。登山靴やバックパックの汚れを落としたり、撥水(はっすい)スプレーをかけたりといった日ごろのケアに加え、もう一歩踏み込んだ手入れをしてみてはいかがでしょうか?

家にいる時間を使って山道具の手入れをしましょう

 

シームレステープってなに?

 今回は、普段はなかなかできない道具の手入れの1つ、テントのファスナー部に使われているシームレステープの張り替えをしたので、早速ご紹介します。

 手元にある山道具のうち、レインウエア、スタッフバッグ、バックパック、ゲイターなどの縫い目の裏側を見てみてください。ウォータープルーフ対応であれば、幅2センチほどのテープで目止めがされていることと思います。これがシームレステープ(シームテープともいう)で、撥水・防水加工された製品の縫い目から雨水などが侵入するのを防ぐために使われていて、登山用品には欠かせない物です。

 ところが、テープは生地に比べて劣化しやすく、数年使っていると剝がれてきたり、ボロボロになって落ちてしまったりすることも。本体はまだ十分に使えそうなのに、ここから水が入ってきてぬれてしまう、といったことがあります。中古のリサイクル店なら目で見て確かめることもできますが、個人の取引が増えている昨今、売買するなら気を付けた方がいいパーツの1つでしょう。

 私が使っているテントは5~6年前に新品で購入した物ですが、先日、久しぶりに広げてみたら、ファスナー部に使われているシームレステープが剝がれかけていました。白く浮き上がり、所々欠落しています。これでは雨の侵入を防げそうもありません。新しい物に張り替えることにしました。

テントのファスナー部、劣化して剝がれかけたシームレステープ

 

シームレステープをきれいに剝がす

 まずは古くなったテープを剝がします。厚手のテープであれば引っぱるだけで簡単に取れることもありますが、薄かったり、素材によってはボロボロだったりしてうまく剝がせないことも。そのようなときは粘着テープを上から貼って、それといっしょに剝がす、アイロンやドライヤーなどで軽く熱を加えてみるなどの方法があります。

 私のテントの場合はいずれもダメでした。粘着テープでは剝がしきれない部分が多く残り、熱をかけると接着成分が溶けて強力にベタついてしまうのです。

 思いきって重曹少量を溶かしたぬるま湯に浸し、テープを少しふやかしてみると、ベタつきもなく、きれいに剝がすことができました。ただし、製品によっては重曹の成分によってテント生地を傷めたり、防水コーティングまで剝がれたりすることもあるので要注意です。重曹を使う場合は、裾部分など影響の少ない所で試してから作業をするとよいでしょう。

 テープを剝がした後は、よく水ですすぎ、陰干しをしておきます。

スルッと剝がれると意外と気持ちいい

 

アイロンでテープを密着させる

 古いテープを剝がしたら、同じく目止めをする部分に新しいシームレステープ(今回はキャプテンスタッグ社製テープを使用)を重ね、アイロンで押さえます。このとき、アイロンの温度が低過ぎるとテープが付かず、温度が高過ぎるとテープや生地が溶けてしまいます。設定温度はテープの仕様書に従ってください。

 テープを貼るときは、なるべくしわができないようにし、縫い目部分の空気を追い出すように密着させるのがコツです。くれぐれも熱をかけ過ぎないようにしましょう。

目止めをする部分にテープを重ね、当て布をしてアイロンで押さえる

密着させると透明で目立たなくなる。まるで新品のように目止めができた

 

 テープを貼った後は、仕上げにテント用の撥水剤、防水スプレーなどをかけて完成。シームレステープの張り替えは専門業者に依頼することもできますが、自分で作業をすればだいぶ安上がりです。それに工夫を重ねながら挑戦するのは楽しいですし、そのようにして手入れした道具にはより愛着が湧くでしょう。

 はじめにも紹介したように、シームレステープはテント以外にもいろいろな登山道具に使われています。もし、剝がれている所を見つけたら修理することにより、より快適に登山を楽しめます。

 ちなみに、テープの劣化が進んでおらず、少し浮いている程度なら、テープを剝がさずに上からアイロンで押さえるだけで、再びきれいに密着することもあります。ぜひ試してみてください。

★外部リンク
・リンク先PDF
http://www.jfmga.com/pdf/sangaku4dantai_seimei.pdf
・キャプテンスタッグ社製
https://www.captainstag.net/products/M-8380.html

SID : 00020060

執筆=小林 千穂

執筆=小林 千穂

山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どものころに山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、現在はフリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』『ワンダーフォーゲル』など登山専門誌に多数寄稿するほか、山番組にも出演。著者に『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)などがある。2014年に南米のチンボラソ(6310m)に登頂。

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