Wi-Fiのビジネス活用術(第5回)進化した「防災Wi-Fi」が地域安全のインフラになる

Wi-Fi 災害への備え

公開日:2016.08.31

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 災害時には平時と違う次元のトラブルが起きる。通信の領域でもそれは同じだ。いつもは当たり前のように使える固定電話や携帯電話がつながらない。通信インフラへの被害や通話の集中によって通信網の処理限度を超えるからだ。情報を収集し、伝達できなければ、救援活動もままならない。だからこそ、万が一に備えてできる限り多くの通信手段を用意しておくことが求められる。

観光向けのWi-Fiが防災にも役立つ

 しかし、災害発生時に備える費用には限りがある。できるだけ費用対効果を考えてバランスの良い防災体制を整えなければならない。そこで注目されているのが、Wi-Fiによる防災対策「防災Wi-Fi」である。東日本大震災では、従来の通信手段が使えない中、SNSによる情報収集・発信が大きな役割を果たした。こうした通信を支える基盤として期待されているのがWi-Fi環境の整備である。

 そのために国も地方自治体向けに補助金制度を用意して、その普及の後押しをしている。例えば、総務省は平成28年度当初予算として、「観光・防災Wi-Fiステーション整備事業」と「公衆無線LAN環境整備支援事業」(総務省ホームページ)を実施した。事業名が示すように「防災」以外に「観光」もWi-Fi整備のキーワードになっている。観光地にWi-Fiがあれば、平常時には観光客向けのサービスの向上につながり、災害発生時には防災面でも活用できるからだ。

 先日発生した熊本地震では、各通信事業者がWi-Fiのアクセスポイントを無料開放。Wi-Fi環境が情報収集・発信に寄与した。NTT西日本のグループ会社であるエヌ・ティ・ティ・メディアサプライ株式会社(以下、NTTメディアス)が提供しているWi-Fiサービス「DoSPOT」では、最初4月15日に熊本県内で無料開放が実施され、大分県を中心に九州地方で広範に地震が発生したことを受け、4月16日には九州全域に対象が拡大された。DoSPOTだけで、約9000カ所のアクセスポイントを無料開放。全体の利用率は約160%(平常時比)まで上がった。その結果、SNSを通した情報発信と拡散によって、各地の詳細な情報がSNS上に公開され、現状把握に大きく貢献した。

 この時に無料開放されたアクセスポイントは、必ずしも防災用に準備されていたものだけではない。由布院などでは観光用に用意されていたものが無料開放されている。観光客向けのアクセスポイントが防災用に転用されたのである。

 このように観光面と防災面の両面で活用できるのが、Wi-Fi整備の大きなメリットだ。地域の住民にとっては、観光ビジネスの基盤となるとともに、災害発生時にも頼りになる存在となる。ログイン時のメニュー画面などを活用することで、通常は観光事業者の広告を入れて運用コストの一部に充て、災害発生時には、情報伝達の窓口にすることもできる。

防災Wi-Fiに必要な3つの構成要素…

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執筆=高橋 秀典

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