オフィスのインフラ整備(第3回)

多拠点ネットワーク整備では3つに注意

2020.07.08

クリップについて

 情報ネットワークはビジネスを支える重要インフラである。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、移動制限への対応や事業の在り方の再考が求められるようになり、改めて情報ネットワークの大切さを感じた経営者も多いのではないだろうか。

 特に最近は、それほど企業規模は大きくなくても、複数の店舗や拠点を展開するケースも少なくない。例えば、エリアをある程度絞ってチェーン展開する店舗や飲食店、それから地域密着の協同組合もエリア内で拠点が分散している。同じく中堅・中小の建設会社も、事業エリアは広くはないものの、工事現場が分散し短期間で転々と移り変わる。

IT人材不足の中で多拠点網を運用しなければならない

 だが一方で、拠点間では大容量なデータを高い信頼性でやり取りできるネットワークが必須だ。コロナ禍でひときわ注目を浴びる医療、福祉関係、調剤薬局、運輸・倉庫などの業態でも複数の拠点を抱えており、その間のネットワークが不可欠になっている。

 それなのに、多くの業種・業態においては拠点それぞれが小規模なので、それぞれIT担当の従業員を配置できない。分散する拠点それぞれでネットワークを管理・運用する人材を張り付けられないジレンマを抱える。

 次の問題がセキュリティだ。多拠点を結ぶネットワークでは、セキュリティ対策が必須になる。大規模企業のような専用回線を用いた通信網の構築はセキュリティレベルが高くても、コスト面から中堅・中小企業にとって現実的ではない。それを代用する手段として、VPN(バーチャルプライベートネットワーク)をインターネットなどの公衆回線上に構築する手段がある。これなら、中小・中堅企業にも、コスト面に関しては現実的なレベルになる。ただしVPN装置の性能によっては、通信速度の低下や遅延が起きるので注意が必要だ。

IT人材不足、セキュリティに続く3つ目の課題は

 3つ目の問題がトラフィックの増加への対応だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、ビデオや音声、画面共有などデータ量が多いオンライン会議が増加し、トラフィックが急増した企業も多い。そうしたときに、利用する通信回線を柔軟に切り替えたり変更したりして対応できることが、多拠点ネットワークには求められる。コロナ禍ではない日常においても、業務で使うパソコンやサーバーWindows Updateが一斉に行われ、トラフィックが急増して拠点間の業務ネットワークの通信が遅くなるケースもある。特にVPNを構築した場合、トラフィック対策が必須になる。

 2つ目、3つ目のような専門的な問題に対応するためにはIT人材が必要だ。それがままならないとしたら、どうしたらいいのか。経済産業省の推計では、ITニーズが拡大する中で、IT人材の供給は減少傾向にあり、今後さらに人材不足は拡大するという。中堅・中小企業では、少ないIT人材を各拠点に配置するのは夢のまた夢だ。

【中堅・中小企業が多拠点ネットワークを構築・運用・管理する際の課題】

ネットワークを「ソフトウエア化」するSDN技術が朗報に

 多拠点ネットワークの課題に対応するには、どうしたらいいだろう。少ないIT人材を活用して、多拠点ネットワークの運用をするならば、「遠隔からネットワークを集中管理し、設定変更なども行えるようにすればいい」と考えるべきだ。

 しかし、拠点に設置するネットワーク機器、ルータースイッチ無線LANアクセスポイントなどは、遠隔から状況を監視できても、トラブル対応や実際の設定変更は現地で行わなければならなかった。なぜなら、これまでのネットワーク機器はそれぞれの機能をハードウエアで実現していたからだ。

 ところが、最近のいわゆる「仮想化」技術の進展で、ネットワーク機器も仮想化できるようになってきた。それがSDN(ソフトウエアで定義可能なネットワーク、Software Defined Networking)だ。

 例えば、セキュリティ対応やトラフィックの増加への対応。本部にいるネットワーク担当者が状態を監視して、必要があれば拠点のセキュリティ機器の設定を変更したり、ネットワークの遠隔自動設定やトラフィックの経路制御を行ったりできる。つまり高いセキュリティが要求される情報はVPNでやり取りし、そうでない情報はインターネット経由にするといった経路の使い分けが実現する。セキュリティの高度化と、トラフィック量の増加への同時対応が可能になるのだ。

 新規に拠点を開設する際も、専用ルーターを配置して電源とネットワークにつないでもらえれば、自社のネットワーク設定を遠隔から送り込んで利用可能な状態にできる。SDN技術を用いて拠点間の通信を閉域接続すれば、貴重なIT人材が走り回る必要がない上に、低コストで信頼性と安全性の高いプライベートネットワークを構築できる。

 こうしたネットワークのソフトウエア化の恩恵は、さらにネットワーク管理のアウトソーシングの可能性も広げる。拠点にIT人材を配置したり派遣したりせずとも遠隔から運用管理ができる仕組みは、突き詰めればネットワークの運用管理を外部の事業者にアウトソーシングできるということだ。こうしたソリューションを活用すれば、限られたIT人材を自社のIT活用戦略立案など攻めの経営に生かせる。SDN技術を活用したネットワーク導入で、多拠点ネットワークが抱える課題を解決すると同時に、経営のパワーアップにつなげられるのだ。

SID : 00031003

執筆=岩元 直久

執筆=岩元 直久

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