ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第36回)

男子プロゴルフにおけるプロアマ戦のあり方を問う

2018.07.20

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 スポーツ界の不祥事が相次いでいます。横綱の暴行事件や女子レスリングのパワハラ問題、バドミントン選手の所属先移籍をめぐる問題、アメフト部の危険タックル問題……。そしてついに、ゴルフでもニュースをにぎわせる事態が起きてしまいました。

 男子プロゴルファーの片山晋呉選手がプロアマ戦で不適切な態度をしたとして、2018年6月27日に日本ゴルフツアー機構(JGTO)が記者会見を開き、片山選手への制裁と再発防止策を発表しました。調査報告書は、片山選手だけに責任のすべてがあるのではなく、機構自身にも責任の一端があると指摘しています。再発防止策では、プロアマ戦におけるガイドラインの策定、プロに対する研修・指導の徹底、懲罰・制裁規定の明確化および厳罰化を明言しています。

 果たして、それで問題は解決できるのでしょうか。今回は、何のためのプロアマ戦なのかを改めて考えてみましょう。問題の根っこを捉えてみると、他のスポーツにも、またビジネスにも通じる話が見えてきます。

そもそも、プロアマ戦は何のためにある?

 近年、男子プロゴルフの試合数は減少の一途をたどっています。男子プロゴルフの人気が高かったのは1970~1980年代。青木功さん、尾崎将司さん、中嶋常幸さんという、いわゆるAONが全盛の時代でした。試合数は、ピーク時の1982年には年間46を数え、真冬以外はほぼ毎週テレビでトーナメント中継が見られました。その後1990年代に入り、バブルの崩壊以降はスポンサー離れが進み、試合数は減り続けました。2018年の試合数は、前年からさらに1つ減って25試合になります。最盛期の半分近くになっています。

 そこで、男子トーナメントを主催する日本ゴルフツアー機構は、スポンサーを大切にしようという観点から、プロアマ戦に力を入れ、出場選手にホストとしてゲストをもてなすことを課しています。つまり、プロアマ戦とは、スポンサー企業を接待する場といっていいでしょう。スポンサー企業は自社の関係者やクライアントを招き、プロとのラウンドを通じて「もてなす」ことを目的に、プロアマ戦に参加しています。

 形式としては、大会に出場するプロの中から、著名なプロ、人気のあるプロが30~40人選ばれ、プロ1人とゲストのアマチュア3人が1組となってラウンドします。コンペ形式で順位を競うケースもありますが、ほとんどがプロとの会話を楽しんだり、時にはレッスンを受けたりと、アマチュアゴルファーからすれば、またとない時間が過ごせるわけです。

 プロの立場からすると、自分たちが活躍できる場であるトーナメントは、お金を出してくれるスポンサーがいなければ成り立ちません。当然スポンサーには感謝すべきで、プロアマ戦はその感謝の意を表す大切な場として存在しています。そして今、このプロアマ戦の存在自体が、片山選手の問題行動をきっかけに疑問視されているのです。

ゴルフをする環境への“感謝”の度合い

 プロアマ戦は、プロが大切なスポンサーに対して感謝の気持ちを表す場です。ところが、この感謝の気持ちがどれだけ選手に根付いているかは疑問です。米国のゴルフ事情に詳しい知人に聞くと、米国のプロゴルファーは、経済的に恵まれない環境で育った者が少なくないそうです。地元の企業やボランティア、ゴルフ関連団体、ゴルフ用品メーカーなどの支援を受けて競技を続け、やっとの思いでプロになれたという境遇の持ち主であることは想像に難くありません。当然、支援に対する感謝の気持ちが自然と芽生えていることでしょう。

 一方、日本では、現役プロ選手のほとんどが経済的に恵まれていて、ゴルフができる環境をすでに手に入れていた人たちです。その環境を支える人たちの献身などを想像できるプロゴルファーは国内にどれほどいるのでしょうか。米国のプロと異なり感謝の度合いが違って当然なのではないでしょうか。

 このことは、基本的には国内選手への教育の不足が大きいと思いますが、私はその根底に、日本のゴルフが“社交の場”として広まったこと、日本ではゴルフにお金がかかり手軽に参加できるわけではないことなどがあると考えています。故に、ゴルフを手軽に参加できるスポーツとして広めていこうという努力が、現役プロや我々を含むゴルフ環境を整える側に必要なのだと思います。

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執筆=小森 剛

執筆=小森 剛ゴルフハウス湘南

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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