一足お先に!IT活用でパワーアップ(第13回)

遠いのに近い? 離島の“最先端”遠隔交流授業

2016.11.09

クリップについて

 教育による町おこしで大きな成果を上げ、全国から注目を集めている離島の町がある。日本海に浮かぶ隠岐諸島の海士町(あまちょう)だ。人づくりに力を入れ、島根県立隠岐島前(どうぜん)高等学校(以下、島前高校)と公立塾「隠岐國学習センター」が連携して、子どもたちの自己実現を地域総がかりで支援している。その結果、今では県外からも多くの入学希望者が訪れる。海士町では、先進的な教育環境構築の一環として、2016年7月に映像を介した遠隔授業の仕組みを導入した。授業の様子や効果について、隠岐國学習センターのスタッフと参加した生徒に聞いた。

<隠岐國学習センター>

2010年に海士町が設立した公立塾。離島・過疎地域が抱える都市部との教育格差を解消し、子どもたちの自己実現を地域総がかりで支援する新しいモデルづくりをめざす。島前高校と連携し、一人ひとりに合った学習支援、社会に出てから必要となる力の育成を図っている。

 島根半島の沖合約60kmの日本海に浮かぶ隠岐諸島の1つ、中ノ島に海士町がある。離島・過疎地である海士町は、「このままでは島がなくなってしまう」との強い危機感の下、島の自立に向けたさまざまな挑戦を続けてきた。2000年の段階では2015年の総人口は2007人という予測だったが、実際には2374人。10年間で400人以上のIターン者、200人以上のUターン者を引き寄せた。人口減少の未来を変えることに成功した海士町は、町おこしの成功例として全国に知られるまでになった。

自分の興味と社会との接点を探る「夢ゼミ」

 8年前の2008年、島前高校は入学者の減少に伴って全学年が1クラスになった。生徒数は100人を下回り、廃校になってしまう可能性があった。その事態を避けなければならない。2008年3月、隠岐島前地域の海士町、西ノ島町、知夫村(ちぶむら)の町村長や役場執行部、高校や中学校の関係者などで「島前高校魅力化プロジェクト」が設立された。

 島前高校の魅力を高めるには、学力向上と進路実現に向けた体制の強化が必要になるが、1学年1クラスになった島前高校では、進学希望と就職希望の両方の生徒を同じクラスで指導しなければならなくなった。島内には塾や予備校がないため、学力差がある生徒たちの進路指導を島前高校が一手に引き受けることになる。教員数が減る中で、個別指導はできても、習熟度に応じた授業編成に限界が出てきた。そこで、海士町では、学習センターを校外に設け、生徒や教員を支援することにした。2010年6月、「隠岐國学習センター」がスタートした。

 隠岐國学習センターについて、大辻雄介副長は「2012年度に2学級への定員増を実現した島前高校と連携し、『グローカル(グローバル+ローカルの造語)人材』の育成という共通の目標を掲げています。今年は3学年で約130人が学習センターに通っています。島前高校と学習センターは補完関係にあり、互いにシナジー効果を生み出しています。学習センターのスタッフが高校に行って会議に参加し、高校の先生たちも帰りに学習センターに立ち寄って、生徒たちの様子を見ています」と話す。

 カリキュラムは「教科指導」と「夢ゼミ」の2つからなっている。教科指導では、自ら学ぶ力を育て、「夢ゼミ」では、対話や実践を通して自分の興味や夢を明確にしていく。

 夢ゼミでは、1年生が、月1回、島前地域を見つめ直すきっかけになるような雑誌制作を行う。2年生になると、「グローカルゼミ」で10人程度の少人数で論理的に考える力と、地域を多角的に見る視点を週1回のゼミ形式で学ぶ。3年生は、「じぶんゆめゼミ」と題され、週1回半年間かけて、生徒一人ひとりが自分の興味に合わせてテーマを設定し、課題研究を行う。

 「自分のやりたいことと、社会で必要とされていることとの交わりが何か、半年間考えてアウトプットを生み出し、深掘りしていきます」(大辻副長)

 生徒たちは自分の興味と地域・社会との接点を模索しながら夢を明確にする。地域・社会に貢献していくというビジョンを踏まえた、自分なりの進路実現につなげるのだ。

宮崎県の高校と遠隔交流授業を実施

 隠岐國学習センターでは、ICTを使ったオンライン授業やデジタル教材の活用にも取り組んでいる。その一環として、宮崎県立飯野高等学校(以下、飯野高校)と遠隔交流授業を行った。NTT西日本が提供する「遠隔授業ソリューション」のテレビ会議システムを海士町の島前研修交流センターと飯野高校の大会議室にそれぞれ設置した。

 この遠隔交流授業は、隠岐國学習センターでは3年生の夢ゼミとして行われた。2016年7月15日の授業では、参加した島前高校3年生の4人と飯野高校普通科3年生の6人がそれぞれ最初に自分の得意なものと地域の自慢をボードに書いて自己紹介。その後、参加した生徒が一人ひとり、自分のやっていきたいことを発表した。(関連動画

対面のような臨場感で、活発に進んだ授業… 続きを読む

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SID : 00036012

執筆=菊地原 博

執筆=菊地原 博

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