一足お先に!IT活用でパワーアップ(第24回)

アプリで子育て支援!日本一小さな村の挑戦

2018.01.31

クリップについて

 日本一小さな村として知られる富山県舟橋村。「子育て共助」をキーワードに、村への転入促進や安心して出産・子育てができるコミュニティーづくりに取り組んでいる。舟橋村は、国立大学法人富山大学地域連携推進機構(以下、富山大学)、およびNTT西日本、NTTアドバンステクノロジ(以下、NTT-AT)とICT連携協定を締結。さまざまな取り組みの中の一環として、村の職員とNTTグループが一体となり、子育て中のパパやママを応援するスマホアプリを開発し、実証実験を進めている。

<舟橋村>

舟橋村役場

富山県のほぼ中央部に位置し、面積3.47㎢の日本一小さな自治体として知られる。村の中央には富山地方鉄道が走り、隣接する富山市中心部へ電車で約15分、車は20分でアクセスできる。この地理的な好条件や宅地造成により、富山市のベッドタウンとして近年は人口が急増。過疎化が進む地方自治体が多い中で注目を浴びている。富山地方鉄道「越中舟橋駅」駅舎と一体になった舟橋村立図書館は、住民1人当たりの貸出冊数で全国トップ※になっている。
※「日本の図書館 統計と名簿2016」による

 舟橋村は1989年から開始した宅地造成をきっかけに、子育て世代が多く転入した。村の人口は1400人から3000人に倍増となった。2015年の国勢調査によると、15歳未満の年少人口割合は18.4%。市町村別で見ると全国14位の高さを誇る。村の平均年齢は2016年時点で約40歳となっており、子育て世代が数多く暮らす。

生活環境課 吉田昭博課長

 だが、「高校を卒業する18歳になると進学や就職で村を出る若者も多く、30代と40代が突出するいびつな年齢構成です。村独自の人口予測では、何も手を打たなければ2060年に現在の2/3の2000人まで減少します」と舟橋村生活環境課の吉田昭博課長は危機感をあらわにする。

 こうした危機感を背景に村の若手職員らが中心となり、富山大学の協力を得ながら、まちづくりで成功している他の自治体の事例を研究した。村の現状と今後の課題の分析を行い、2013年に「舟橋村環境総合整備計画」を策定した。

 「子育てするなら舟橋村! 住み続けるなら舟橋村!」を目標に、子育て世帯の減少に対しては「子育てサービスの充実」、平成初頭の宅地造成で転入し中高年期を迎える世帯の増加に対しては「地域の信頼を醸成」を打ち出した。地域として生き残る戦略だ。以下、特に子育て支援の取り組みを紹介する。

子育てコミュニティーに関するICT連携協定を締結

 舟橋村では整備計画の策定に合わせ、子育て環境に関するアンケート調査や未就学児童の保護者へのヒアリングを実施した。「村の子育て世代は、保護者同士や子ども同士が交流できる場所や地域での見守りを求めており、コミュニティーが鍵を握ると分かりました」(吉田氏)。村の地方創生として子育て世代の転入促進(40世帯/5年間)、出生数の向上(149人/5年間)、県内企業の仕事づくり(1団体/5年間)といった具体的な目標を掲げた。

 目標の達成に向け、産官学が連携した勉強会が2014年にスタートした。住宅メーカーと一緒に子育て世代向け賃貸住宅の建設に向けたスキームを構築したり、造園事業者と公園を使った子育て共助のコミュニティーづくりを検討したりしている。

 産官学が連携した舟橋村創生プロジェクト総合推進会議や勉強会に参画したNTT西日本は、ICTを活用したコミュニティーづくりについて意見交換を重ねた。その結果、2016年6月に、舟橋村、富山大学、NTT西日本、NTT-AT による「ICT活用による子育てコミュニティーづくり」の連携協定を締結した。

 連結協定により始まった事業の目標は大きく分けて2つある。1つ目は、ICTで子育て世代をつなぎ、近隣を含め共助のコミュニティーを醸成することにより、子育て世代の転入促進と出生数の向上という村の戦略を支援する。2つ目は、ICTで子育て世帯のデータを収集・分析し、民間企業がそのデータを活用するとともに、データ利用料を株式会社舟橋村(仮称)に支払うことで、新たなビジネスと雇用を創出するというものだ。

 NTT西日本では、NTT-AT と連携してスマートフォンアプリ「ふなはし 子育てパパ・ママ応援アプリ」(以下、子育て応援アプリ)を提案し、村の職員の意見を聞きながらアプリの開発を進めてきた。吉田氏は「村に転入してきた世帯は知り合いもいないので、孤立する場合があります。そこで、子育て世帯をつなげ、みんなで助け合う関係をつくり、孤立させないようにする。そうした安心感により、子どもを産みやすい環境を醸成する狙いがあります」とアプリ開発の経緯を説明する。

アプリを通じてコミュニティーに参加

 舟橋村とNTT西日本およびNTT-ATは、4つのステップに分けて事業を進める。ステップ1(2016年度)は、子育て応援アプリの開発とデータ集積の仕組みの開発を行い、子育て世帯25人(ふなはし保育園の在園、入園予定の子どもの母親)を対象に、2週間の実証実験を実施した。

 子育て応援アプリの主な機能は次の通り。「イベント情報のシェア」は保育園で行われるフリーマーケットなど、カレンダーに舟橋村や近隣の子ども向けイベントや情報をみんなで登録し合ってシェアする機能。登録されたイベントや情報に追加のコメントや質問もできる。「トピックスシェア」は子育て中に困っていることや悩んでいることなど、何でも自由に書き込める機能。パパ・ママの体験談や役立つ情報、アドバイスなどをコメントし、つながりを広げられる。「広場」はアプリ登録者のプロフィール、シェアされている情報やトピックスを見られる機能。友達交換すると1対1のメッセージ交換ができるようになる。

 実証実験では、子育て応援アプリを活用して在園のお母さんが保育園の行事の情報を発信したり、入園予定のお母さんがフリマに出品してほしいリスエストを出したりする。保育園の入園式にどんな服を着ていけばいいのかなど、保育園のホームページには書いていない生の情報を先輩のお母さんから得られ好評だ。

 もちろん、実験に参加してもコミュニティーによる交流にあまり積極的ではないお母さんもいた。そうしたお母さんには、アプリ上でのアクションが一定期間無い場合に「村長キャラクター」から声掛けをするなど、参加を促す仕組みも取り入れた。

 「この子育て応援アプリの目的は利便性を高めることではなく、共助のコミュニティーづくりです。ですから、アプリ内のやり取りだけで終わらせず、互いに顔を合わせる機会を設けるようにしました。アプリのやり取りを通じて打ち解け合い、今まで会合に参加しなかったお母さんも、参加するようになるなどの効果が出ました」(吉田氏)

 ステップ1への参加は保育園に入園中の子どもを持つお母さんが対象だったが、他のお母さんからもアプリを使いたいとの声が村に寄せられているという。共助とは客体を主体に変えることだ。受け身だった人が子育て応援アプリを通じて保育園の活動に参加する。人との関わり合いを生み出したことが高い満足度につながった。

 2017年11月からステップ2として、子育て応援アプリの利用者を周辺地域の子育て世帯にも広げ、100人程度で実証実験を行っている。さらに、子育て世帯がアプリを通じてやり取りする語句のデータを集積し、民間事業者向けにデータ活用の勉強会も行っている。例えば住宅メーカーなら、賃貸住宅に入りそうな世帯や、子どもが成長して住み替えを検討している世帯にアプローチできる。こうしたエリアマーケティングの可能性も広がる。

 NTT西日本およびNTT-AT とのICT連携協定について、吉田氏は「期待は大きい。子育て世帯が共助のコミュニティーに参加すると安心感も生まれます。将来的な出生率の向上につなげたいと考えています。最終的には県内の民間企業に当村のデータを活用してもらい、新たなビジネスが生まれると期待しています」と将来の可能性を語る。

 舟橋村の取り組みは多くのマスコミで取り上げられている。全国的な注目度も高い。NTT西日本およびNTT-ATではICT連携協定を通じ、今後も自治体の課題解決を支援する活動に注力していく考えだ。

SID : 00036024

執筆=山崎 俊明

執筆=山崎 俊明

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