実例で学ぶ!ドラッカーで苦境を跳ね返せ(第23回)

経営と自己実現編 諦め切れない新規事業の突破口

2017.10.04

クリップについて

 実例からドラッカーのマネジメントを学ぶ連載。今回は、クリーニング業界できっかけを得てビジネスを回復させた共生社の取り組みの続編です。クリーニングのタグというニッチな分野の技術革新にこだわった同社は耐洗紙を使ったメモの商品化がヒット。これをきっかけに再浮上するきっかけをつかんでいる。

「なすべき貢献は何であるかという問いに答えを出すには、三つの要素を考える必要がある。第一は、状況が何を求めているのかである。第二は、自己の強み、仕事の仕方、価値観からして、いかにして最大の貢献をなしうるかである。第三は、世のなかを変えるためには、いかなる成果を具体的にあげるべきかである」
(『P・F・ドラッカー 経営論』611ページ)

<解説>ドラッカー教授の「貢献」という言葉と出合って人生が変わったという経営者は多い。今回の主人公もその1人だ。この貢献について、3つのポイントを教授は指摘する。

 まず「状況」だ。現実は厳しく、問題だらけに見えるかもしれない。しかし問題ばかりに目を向けていては、組織は餓死する。社会は常に変化し、それに伴い新しい機会が出現する。そこに目を向けることが、組織の生き残りには欠かせない。

 次に「自己の強み、仕事の仕方、価値観」。特に人的資源の乏しい中小企業では、経営者自身の持ち味を生かすことが重要になる。

 最後に挙げる「成果」は、利益を出すことではない。世の中に変化をもたらすことだという。利益では組織を方向づけられない。社会をより良い方向に変えている実感がメンバーを動かす鍵だ。こうして初めて、組織の1人ひとりが貢献について考えるようになる。
(ドラッカー学会理事=佐藤 等)

ドラッカーに学んだ先輩企業(15)「共生社」(後編)

 一度は失敗した新製品。けれど、諦め切れなかった。

 共生社(兵庫県尼崎市)の主力製品はクリーニングタグ。クリーニング店が衣類に識別用に付ける紙製のタグだ。2代目の槙野雅央社長が1999年に父の後を継いだ後、市場は縮小の一途をたどった。現状を打破しようとさまざまな新規事業に挑んだが、連戦連敗した。

 転機は2013年。ドラッカーの勉強会に参加してはたと気付いた。新規事業は自社が蓄積してきた強みが生きるものでなくては成功しない。ドラッカーが強調するこの原理原則に、自分が手掛けてきた新規事業は反していた。

志は高いが売れない

 そこで心機一転、取り組んだのが「ホチキスを使わないクリーニングタグ」の開発だった。

 クリーニングタグは通常、ホチキスで留めるが、衣類に傷をつける恐れがあり、エコロジーの面でも問題がある。そこでタグに切れ目を入れ、端を差し込んで留める方法を考案し、特許を取得。「スマートエコタッグ」と名付けて、14年に発売した。

 これこそ自社の強みが生きる新製品だと確信していた。競合他社の中でタグ専業は共生社だけ。タグそのものを改良するアプローチは自社ならではだ。ところが、クリーニング店のスタッフには「面倒臭い。ホチキスを使ったほうがラク」と不評。導入先を開拓できなかった。

 思わず考え込んだ。ドラッカーによれば――

「イノベーションはつまるところ経済や社会を変えなければならない。それは、消費者、教師、農家、眼科手術医の行動に変化をもたらさなければならない」(『イノベーションと企業家精神』)

 つまり真に革新的な商品はユーザーの行動を変えるという。この点、新しいタグはクリーニング店のスタッフの行動を変え、地球環境にも資するはず。これこそまさにイノベーションではないか。しかし、現実には売れない――。

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SID : 00042023

佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。

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