システム構築のための調整力向上講座(第6回)

現場の「真の要求」を知り期待値をマネジメントする

2016.03.16

クリップについて

 前回、システム開発はサービスの提供であり、それにはモノの提供とは違った特徴があること、その品質には「成果」と「提供プロセス」の2つがあることを説明しました。「成果」と「提供プロセス」、この2つの品質に対して顧客(現場)の満足を引き出せるかどうかは、現場が事前にどれだけ期待しているかに大きく左右されます。

 同じ品質であっても、それ以上に顧客が成果を期待していたら「期待はずれ」になってしまいますし、期待以上の品質であれば「いい買い物をした」と思ってもらえます。

 コトラー氏は、顧客の期待度を高める要素として、9つの要素を紹介しています。

 例えば、1つめにある「明確な約束」では、プロジェクトのスタートまでのプロセスの中で交わされた約束は、それが口約束であっても、むしろ口約束のほうこそ、守られることを現場は期待します。

 また、サービスは形がなく、触れられないため、現場はサービスを購入する前に「手がかり」を探します。システム開発担当者が自信満々に振る舞っていれば、「当然、能力が高く、サービス品質も高いだろう」と現場は期待します。それは現場にとっては「暗黙の約束」として期待度を高めるのです。

期待値をマネジメントする

 品質と期待値との関係を考えると、現場にとって良いサービスとは「現場の期待を上回るレベルのサービスが提供されること」だといえます。ということは、現場に満足を引き出すためには、現場の期待値がどのように決まるのかを知り、それをうまくマネジメントする必要があるのです。

 現場の「真の要求」を知り、期待値をマネジメントするアプローチとして、以下の5つを紹介します。

どのような期待をしているのかを聞く

 現場の真の要求、何を期待しているのかを知っているのは、現場だけです。それを知るためには現場に聞くほかありません。しかし、現場自身も要求や期待を明確な言葉で表現できるほど自覚していないのがほとんどです。そこで、以下のポイントについて質問するとよいでしょう。

(1)プロジェクト終了後、自分たちの業務はどうなっていたいか
(2)プロジェクト終了後、プロジェクトのステークホルダーはどのような成長を遂げていたいか
(3)プロジェクト終了後、自分たちの組織はどのような成熟を遂げていたいか
(4)プロジェクトを進める際、現場自身はどのようなかかわり方をしたいか
(5)過去のプロジェクトで、システム開発担当者に不満を感じたことは何か

 (1)~(3)の質問は「成果の品質」を問うものです。(1)は業務の「Before/After」について問い掛けます。(2)と(3)は派生的な要求を問うものですが、実際には現場の要求度はこちらのほうが高い場合も少なくありません。

 (4)と(5)は「提供プロセスの品質」に関する質問です。現場によっては「できるだけ一緒に良いものを作りたい」というタイプと、「任せるから適当にやってよ」というタイプがいます。

 後者の場合、プロジェクトが失敗する可能性があるため、現場を巻き込むプロセスを考える必要があります。現場が過去にシステム導入の経験があるなら、そのプロジェクトの結果はどうだったのか、発生した問題を聞いておくことで、現場がプロジェクトに何を求めているのかが分かります。

できることだけを約束する… 続きを読む

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執筆=芝本 秀徳

執筆=芝本 秀徳プロセスデザインエージェント代表取締役

プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。

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