税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第34回)

軽減税率延長される法人税、課税の仕組みを確認

2019.01.30

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 2018年12月21日、政府は「平成31年度税制改正の大綱」(税制大綱政府案)を閣議決定しました。大綱には、中堅・中小・小規模事業者の支援として、法人税の軽減税率について特例の適用期限を2年延長することが明示されました。

 法人税は納付によってキャッシュフローに影響を与えるため、経営者にとって税率が気になるところです。経営判断に重要な情報の1つであるキャッシュフローの予測は、経営者が企業の利益とともに法人税も把握していないと精度が上がらない場合があります。しかしながら、法人税の算出は税理士任せになっている経営者もいるのが現実のようです。そこで本記事は、経営者が自社の法人税を把握できるように、算出方法や課税の仕組みを解説します。

法人税の課税標準の算出方法

 会計と税務は、経営者が経営判断を行うに当たって必要不可欠といえます。ただし、それぞれ目的が違い、計算方法も異なります。

 会計の目的は出資者や金融機関など利害関係者への情報開示と、経営意思決定に役立てる業績という情報を経営者が把握することです。その会計で利益として算出されるのが、当期利益です。対して税務の目的は、適正な法人税を算出することです。税務上の利益として算出されるのが所得金額で、法人税の課税標準となります。

 会計上の利益は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、収益(売上)から費用(経費)を差し引いて計算されます。一方、税務上の利益である所得金額は、益金の額から損金の額を控除して計算されます。

 収益と益金・費用と損金に処理されるものの大部分は一致しますが、異なるものもあります。異なる理由は、法人税法において課税の公平性の担保や経済政策への配慮などから、会計上は収益・費用となっても、税務上は益金・損金とならないもの(所得金額の計算では、益金不算入・損金不算入扱いとなるもの)が定められているからです。逆に、会計上は収益・費用とならなくても、税務上は益金・損金となるもの(所得金額の計算上、益金算入・損金算入扱いとなるもの)もあります。

 例えば、「今期は利益が多く出たから、役員賞与の支給をすれば、節税にできる」と考える経営者もいるでしょう。しかし、役員は経営者として自らの賞与を決定できることから恣意性を排除するため(税務の目的である適正な課税の実現のため)事前に税務署に届け出をしていない役員賞与は、税務上で損金扱いとはなりません。

 このような税務的な観点から、会計上の利益と税務上の利益である所得金額の間に差が生まれてくるのです。そのため経営者が会計だけ把握していると、キャッシュフローの予測を見誤る可能性があります。

 法人税の課税標準である所得金額を求める次の算式が、税務を理解しキャッシュフローの予測をより正確に行うための1つの手掛かりとなります。

(会計上の利益)+(益金算入額・損金不算入額)-(益金不算入額・損金算入額)=(所得金額)

 具体的には、法人税申告書の別表4「所得の金額の計算に関する明細書」がこの役割を担っていますので、一度確認することをお勧めします。自社の益金算入・損金不算入項目(別表4の加算項目で法人税が多くなる)、益金不算入・損金算入項目(別表4の減算項目で法人税が少なくなる)にどのようなものがあるかを知ることは、経営者にとって重要なことです。

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執筆=山岡 美葉

執筆=山岡 美葉

税理士、株式会社アールテロワール代表。
地方銀行に勤務した後、一定の期間を置いて、簿記1級から税理士を目指す。会計事務所勤務を経て2018年1月に税理士登録。現在、千代田区平河町にて開業し、法人税・資産税を中心に税理士業務に取り組んでいる。

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