日々の業務において、さまざまな経費が発生します。経費の中でも注意したいのが交際費の取り扱いです。「何となく」といった曖昧な判断で勘定科目を分けて経理処理していると、税務調査の際に損金として否認されてしまうケースがあります。
そうなれば納税額が増えるだけでなく、ペナルティーとして加算税を追徴課税される可能性が高まります。そこで今回は、「商品券」「会費」「見舞金」といった具体的な事例を通じて、法人における交際費の範囲、損金として認められる条件について解説します。
交際費の考え方の基本
資本金1億円以下の法人の場合、交際費の金額が年間800万円以下であれば、全額が損金扱いされます。資本金が1億円超の法人については、飲食などによる交際費の50%までが損金扱いとなり、それ以外は全額「損金不算入」(損金に認められない)となります。だからといって800万円までは何でも交際費にすれば損金に認められる、飲食などによる経費ならば50%が損金扱いになるというわけではありません。交際費に認められる条件があるのです。
※「経費」と「損金」の違いについては、第19回「飲食費や冠婚葬祭で節税ができる!経費と損金の違い」で解説しています。
<使い方次第で変わる商品券>
まずは商品券です。会社で商品券を購入した場合、用途や贈る相手によって税務上の処理が変わります。例えば、商品券を取引先に贈答した場合は「交際費」に該当します。
また宣伝効果を意図した抽選などにより、一般消費者に対してプレゼント(法律用語では交付)する場合は「広告宣伝費」での処理となります。ただし、1件あたりの金額が大きいと交際費と見なされる可能性がありますので、1件あたりを3000円以下に設定するなど少額にしておいた方がよいでしょう。
商品券を従業員に渡す場合は、現金と同等の取り扱いになりますので、金額の多少にかかわらず「給与」になります。ただし、雇用契約に基づいて支給される結婚、出産などの祝い金品としている場合は、その金額が支給を受ける人の地位などに照らして、社会通念上相当と認められる金額ならば、勘定科目が変わり「福利厚生費」になります。
次に会費です。商工会のような経営者団体などに支払う通常の会費は、「諸会費」として経理処理され損金扱いになります。しかし実際の使い道が、飲み会などの懇親会費であれば、「交際費」に該当します。領収書に「会費」と記載があっても、その実態を確認しましょう。もし税務調査で、諸会費ではなく交際費と認定され、前述した800万円を超えるようなことになれば、損金不算入となり加算税が追徴課税されてしまいます。
同じく諸会費としては、ロータリークラブのような社会奉仕団体などへの会費がありますが、こちらは交際費扱いとなります。
<判断が難しいタクシー代や見舞金> … 続きを読む
執筆=並木 一真
税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート。会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。
https://namiki-kaikei.tkcnf.com/
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