技術TODAY(第5回)

IoTで水道メーターが進化。未来型都市へ

2017.03.27

クリップについて

 あらゆるモノをインターネットに接続するIoT(Internet of Things)。新しいビジネスを生み出す可能性を持つ概念として注目される。私たちの生活に密着した分野でも着々と実用化が検討されている。

スマートシティに不可欠なIoT

 IoTは今やIT業界に限らず、社会全体のメガトレンドといえる存在になりつつある。ここ数年で急速に盛り上がっているIoTは、これまで通信機能を持っていなかった「モノ」に通信機能を持たせて、高度な情報化を推進する。

 IoT活用によって実現が期待される取り組みの1つに「スマートシティ」がある。さまざまなICTを駆使して、快適な生活と環境保全を両立する未来型都市をつくる。現在、世界各地で実証実験が行われており、第一段階として電気、ガス、水道などのインフラ運用の効率化が進められている。

水道メーターを遠隔でモニタリング

 スマートシティ実現に向けて、商用ベースの取り組みが進んでいるのは電力だろう。既存の電力メーターに通信機能を持たせた「スマートメーター」への置き換えを各電力会社が実施中である。電力以外のインフラでもスマート化の動きが活発化し始めた。神戸市では水道スマートメーターの導入に向けた共同トライアルを計画し、2016年3月から神戸市水道局、NTT西日本、ミライト・テクノロジーズ、センサスジャパンの4者共同による実証実験をスタートさせた。

 従来の水道メーターは、検針員が定期的に契約先を訪問して流量を目視確認する。スマートメーターは、流量を自動で送信するほか、漏水の検知機能も持つ。経費節減や供給サポート、さらには災害時の迅速な対応への貢献が期待できる。

 ただし、いくつかの課題があるのも事実だ。例えば、屋外の地中に設置される水道メーターの多くは、通信が天気や気候に左右されたり、通信に必要な電源を確保できなかったりと、スマート化に適した環境にあるとはいえない。また、メーターボックス内は電波が伝わりにくいといった課題もある。その他の課題も含め、実用化にはこれらの改善を図る必要がある。

実用可能なレベルに達する水道スマートメーター

センサスジャパンが提供する水道版スマートメーター「iPERL」

センサスジャパンが提供する水道版スマートメーター「iPERL」

 神戸市の実証実験では、神戸市内に設置した10台の水道スマートメーターから流量データを遠隔収集して分析。従来のアナログメーターに対する精度や有用性を比較検討するとともに、管路監視や漏水検知への適用性について検討が行われた。実験で使用された「iPERL(アイパール)」はセンサスジャパンが提供する電磁式水道スマートメーターで、双方向通信機能や高度な計量精度を持っている。バッテリー駆動のため電源の心配も不要だ。しかも低消費電力のため10年以上動作する。この装置を市内の学校や住宅に設置して、NTT西日本、ミライト・テクノロジーズが構築した実験試験局に流量を送信し、クラウド上の管理システムで収集・分析する仕組みを整備した。

 通信には低い周波数帯(280MHz帯)の電波が使われた。この周波数帯を使用することによりメーターボックス内にある水道メーターとの通信をより安定させている。実証実験の結果からは、障害物が少なく見通しの良いといった条件で、実験試験局から約6km離れた地点に設置された水道スマートメーターとの通信について、良好な結果が得られた。

 また、高精度なiPERLと遠隔で流量を把握するシステムにより、従来のメーターでは計測できないわずかな水量が遠隔地にて把握することが可能となり、漏水検知を含めた水道管網管理の用途でも活用が期待できる。

IoTの進展で未来型都市へ

 一方、興味深い取り組みが横浜市でも行われている。横浜市では水道・ガスのスマートメーターから得たデータを合わせて自動検針システムに送り、従来の目視による検針データと比較する実証実験が行われた。この試みにより、無線自動検針の正確性と通信成功率を検証した。異なるインフラを複合的に管理して運営を効率化するほか、将来的には高齢者に対する「見守りサービス」のモデル化もめざしている。

 スマートメーターは主に料金を算出する用途で使われているが、インフラの使用状況の見える化にも有効となっている。スマートメーターは、都市におけるさまざまなビッグデータを収集するために欠かせない。スマートメーターのデータが蓄積され、インフラの見える化が進めば、これまで考えもしなかったビッグデータの活用方法が見いだせるかもしれない。インフラの新たなビジネスモデルが生まれ、都市の在り方が変わる可能性もある。快適で効率の良い未来型都市をつくるためにIoTが果たす役割は非常に大きい。今後の進展に注目したい。

SID : 00093005

執筆=林 達哉

執筆=林 達哉

あわせて読みたい記事

連載記事≪技術TODAY≫

PAGE TOP