技術TODAY(第12回)

注目技術、低電力無線で農業・漁業支援

2017.12.11

クリップについて

 農業・漁業とICT。一見すると縁遠い印象を受けるが、最近はつながりを深めつつある。ICTの活用によって「経験と勘」に頼らず、農業・漁業の生産性を高める取り組みが各地で進められている。

 27.7%――これは総務省が2017年9月に発表した、わが国の総人口に占める65歳以上の割合を示す数値である。総人口が年々減少する一方、高齢者の数は増え続けている。高齢者の割合は世界でも群を抜いてトップだ。

 高齢化は、社会のさまざまな仕組みに影響を与える。とりわけ深刻なのが「労働力不足」問題だ。特に、地方では都市部への人口流出が進むだけでなく、地域を支えている産業である農業、漁業の担い手の高齢化が顕著になっている。将来の労働力不足は避けられないものになりつつある。

 こうした現状を踏まえ、国や地方自治体は農業、漁業を取り巻く課題を解決し、他産業と同様に成長、発展させるための施策を打ち出している。その中でも注目を集めているのがICT活用による「スマート農業・漁業」の推進だ。本記事ではNTT西日本と自治体の協働による実践例を取り上げる。

ミニトマト栽培のノウハウを「見える化」

 熊本県はミニトマトの生産量日本一(国内生産の31.3%:2016年冬春トマト)を誇る。しかし、高齢化による労働力不足はここでも課題だ。その解決のために、同県では早くからICT活用を検討してきた。

 ところが、そこには大きな「壁」があった。それはコストの問題だ。ICT活用には導入、運用に相応のコストがかかる。その負担が各農家の経営圧迫につながりかねないことが、普及が進まない要因の1つだった。

 そんな中、NTT西日本はNTTグループ会社と共に、自治体やJA熊本経済連、地域のJA、県農業研究センターと連携し、農研機構の「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」によるICT活用を推進するための取り組みを2016年7に開始した。トライアルの場は県北部の長洲町ミニトマト部会の生産者に協力いただいた。

 ICT活用の第一歩は生産現場の「見える化」。ミニトマト栽培用のハウス内に設置したセンサーで温度、湿度など環境データを取得し、クラウド上に蓄積する。あらかじめ設定した値を超えた際に生産者に通知したり、必要に応じてハウスの窓を開閉したりすることを可能にした。また、環境の見える化・データの蓄積により、生産者個々の状態やノウハウを共有し、地域全体の生産量や品質の向上を推進できる。

 地域内の通信には920MHz帯の自営広域無線を利用する。今後はトライアルで得られたデータを基に、気象情報などさまざまなビッグデータを組み合わせて解析し、ミニトマト栽培に最適な育成環境づくりを支援する。

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執筆=林 達哉

執筆=林 達哉

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