技術TODAY(第15回)

生徒も先生も笑顔に!ICTが部活をサポート

2018.03.19

クリップについて

 中学・高校の部活動への新しい支援策が人気だ。顧問を務める教員の負担軽減が求められていることに加え、その教員の指導力が不足しがちで、それに満足していない生徒たちのニーズが重なり、ICTを使った新しい支援策が注目を浴びている。“魅力ある部活”にするための支援策は、今後さらなる充実をめざしている。

 2017年12月、文部科学省から「学校における働き方改革に関する緊急対策」が発表された。この中で「部活動のあり方」についても提言がなされた。最近耳にする「ブラック部活」という言葉が表すように、部活動に携わる教員の過重負担が大きな問題だ。文科省は、これまで学校に委ねてきた部活動の運営体制を見直し、地域ぐるみで支援する方針を打ち出している。

 部活動の問題は教員の過重負担だけではない。例えば顧問(指導者)を務める教員の専門的な競技指導力に関する問題がある。日本体育協会の調査では、中学・高等学校の部活顧問の約半数が、担当する競技の経験を持っていない実態が明らかになった。

 一方、部活に取り組む生徒の立場では、指導者不在でレベルアップを図るのは至難の業だ。自分なりにいくら懸命に練習しても、経験豊富な指導者が率いる学校と対抗すれば不利になることは免れない。教員の労働環境を改善するとともに、このような状況に置かれた多くの生徒たちへの対策も必要だ。

ICT活用で部活を支援

 文科省は、教員の負担軽減と生徒への適切な指導の観点から、教員以外の部活動指導員など、外部人材の登用を積極的に進めるとしている。2017年現在、中学校では約3万人の外部指導員が活動しているが、割合としてはまだ少ない。そこで注目されているのが、ICTを活用した部活動支援の取り組みである。

 部活動におけるICT活用は、これまで主にDVD視聴や、パソコンを使った練習メニュー管理などが中心だった。しかし最近ではスマートフォン、タブレットの普及、通信速度の向上といったICTの進歩が著しい。現場で指導を受ける感覚で、実践的なトレーニングができる仕組みが整いつつある。その代表格にJASP(ジュニアアスリートサポートプログラム)がある。

ノウハウが満載

 JASPはサービス提供者となる保安企画と、アライアンスパートナーであるオール・オン・スポーツ、NTT西日本が共同で進めるプロジェクトだ。オール・オン・スポーツの持つスポーツ医・科学のノウハウ、保安企画が手掛けてきたコンテンツ制作・動画配信技術、NTT西日本の映像配信サービスや学内ネットワーク技術を組み合わせた。専門的な指導者がいなくても、スポーツ医・科学に基づくトレーニング情報を提供する。

 コンテンツは体力づくりと各競技別テクニックのアドバイスに分かれる。体力づくりには、ケア(水分補給、栄養指導、テーピング、ストレッチ、アイシング、熱中症など)、ストレングス(目的別、部位別のトレーニング方法)、コンディショニング(体のゆがみや筋バランスのチェック、矯正)のコンテンツが並ぶ。監修は各競技の強豪チームの監督や大学の研究者だ。経験不足で自信が持てない顧問の指導をカバーする。

 コンテンツの動画はパソコンのほかタブレット、スマートフォン、さらにNTT西日本が提供する情報機器「光BOX+」(※1・※2)を使えば大型TVなどで視聴可能だ。インターネット接続環境があれば、場所や時間を問わず自由に利用できる。従来のように、全員が集まってDVDを見るスタイルではなく、生徒がメニューを選んで再生する。各自が強化したいポイントに絞った活用が期待できる。

※1 「フレッツ光」等のブロードバンド回線、および対応サービスプロバイダーとの契約・料金、ルーター等が別途必要
※2 HDMI端子付きテレビが必要

JASPホームページから

全国300校以上で導入進む

 JASPは中国・東海エリアでのトライアルを経て、2016年4月から本格的に提供が開始された。2018年1月末時点で、全国1000団体以上が採用する人気プログラムに成長した。扱う競技種目は20を数え、中学・高校で行われるスポーツ部活動の大部分を網羅する。すべてのコンテンツが無料で利用できるのも拡大を後押ししているようだ。

 ある高校のソフトテニス部顧問はJASPの魅力として「生徒自身が個々に動画を見られる」「強豪チーム指導者による監修」「動画の分かりやすさ」などを挙げる。生徒からは「さまざまな戦術、展開の実践」「ポイントを絞った解説」などが支持されている。ケアやテーピングなどのコンテンツは、選手に限らずマネージャーにとっても有効なものとして活用されている。

 JASPが提供するコンテンツの内容は幅広い。例えば、「メンタルビジョントレーニング」は、視覚機能向上を図るトレーニングと、感情のコントロール力を高めるトレーニングを組み合わせた独自のプログラムだ。さまざまな競技に応用できる視力を、ゲーム感覚で鍛える。

コンテンツ例

 競技のトップレベルのテクニックコンテンツを提供するJASPがめざすのは、トップアスリートの育成ではない。学校教育の一環として、生徒たちがより安全に、楽しく部活動に参加できる環境を整備するのが最大の目的だ。JASPでは、今後もコンテンツの充実を図るとともに、教育現場から出された意見を積極的に取り入れ、信頼できるトレーナーとして普及を推進したいとしている。

SID : 00093015

執筆=林 達哉

執筆=林 達哉

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