視点を変えて可能性を広げるITの新活用術(第3回)

業務で手書きは、なくならない

2020.02.12

クリップについて

 「手書き」の書類。あらゆるビジネスに、今でもぴったりと寄り添った存在だろう。

 受発注の書類の電子化を自社で進めたいと思っても、相手があるだけに簡単ではない。注文書は手書きファクスで送られてくるのは当然のことで、電話1本で注文というケースがまだ多い業界もある。

 店舗のポイントカードなどの会員登録も、顧客の属性が若年層ならば「QRコードからスマホで登録してね」と言えるが、幅広い年齢層や属性の顧客の業態では、手書きの申込書はなくせない。宿帳しかり、金融機関や公的機関、地方自治体の申請書、依頼書もしかり。見回せば、不動産業の顧客アンケートや賃貸申込書、士業では社会保険の加入手続き書類など、どんな業種業態にも多かれ少なかれ手書きの書類は存在する。

必ず生じるテキスト化業務

 そこで問題になるのが、書類の情報をどう取り扱うかだ。手書きであれ、印字されたものであれ、紙の書類そのままでは、業務システムと連携できない。書類に書かれた情報を、手打ちでシステムに登録する業務がほとんどの企業で生じる。

 働き方改革関連法により、2020年4月からは中小企業にも時間外労働の上限の規制がかかる。働き方の変化や効率化が、目前の課題となる。オフィスワーカーにとって、書類にまつわる業務は、人手と時間をかけて処理しなければならない「効率化の敵」だ。書類とにらめっこしながら、パソコンのキーボードをたたいて数字や文字を入力する。企業によっては、専任で日がな一日打ち込み続ける。業務として生産性が高いものではなく、モチベーションは高めにくい。作業の繰り返しでありながら、間違いが許されない。

賢いAIが負荷軽減のカギに

 紙の書類をデータ化するときに、人海戦術に頼らない方法としては、OCR(光学的文字認識)の知名度が高い。マークシート方式なら高い精度で読み取れるし、活字や丁寧な手書き文字ならば一定の認識率を得られる。しかし、業務で取り扱う書類の多くは、不特定多数の人が書いた、多種多様のクセのある文字で埋め尽くされている。

 ところが、近年の人工知能(AI)の発達は、OCRの性能を飛躍的に高めることに成功した。特に、千差万別である手書き文字の読み取りに大きな力になり、正しく読み取れる確率がぐんと向上した。

 以前であれば、OCRを導入してもなお、チェックのための人手の目視作業が付帯した。しかし、最新のAI OCRならば認識率の高さに加え、認識した文字と読み取った画像の該当部分を照らし合わせて、チェック作業も簡略化できる。紙の書類、それも手書き文字の読み取りという業務から従業員を解放し、労働負荷の軽減、ミスの軽減、より付加価値の高い業務への転換が進む。

 とはいえ、こうしたパソコン業務は、経営側にとって不透明な領域になりがちだ。パソコン業務の“中身”は、把握しにくいからだ。パソコン業務のうち、どれだけが”繰り返し作業”に割かれているか分からなければ、業務効率化から取り残される。だが、パソコンに専用ソフトを入れると、操作ログをAIが自動的に分析するサービスがある。こうしたツールでパソコン作業を可視化すると、入力作業を繰り返す業務の多さをあぶり出せる。その実態が手書き文字の打ち込みならば、OCRで打ち込み業務を自動化するストーリーが描ける。

RPA活用とOCRをセットでトータルな業務自動化を推進

 ここで、もう少し業務効率化に対し視野を広げてみたい。AI OCRで紙の書類の文字読み取りが自動化し、テキストデータ化したファイルが出来上がった。次に業務システムに入力するのが業務のフローだとしよう。

 そこで注目したいのが、こちらも話題となっているRPAだ。RPAはロボティクスプロセスオートメーションの単語の頭文字からつくった略語で、パソコンで行う作業や操作を自動化してくれるもの。ソフトウエアロボットともいわれる。

 AI OCRで紙の書類の文字をテキストデータ化したら、次にRPAで自動的にシステムにデータ入力、登録をするようにシナリオを作れば、人手が必要になる工程は激減する。夢のような業務の自動システムが、中小企業でも利用可能なコストや手間で出来上がる。

 RPAも“弱いAI”だ。AIという最新用語が出てくると、大企業だけのものと想起しがちだ。しかしAIは、中小企業にも数多くある「紙の書類から情報を業務システムに投入する」業務を高いレベルで自動化する。人手不足が課題となり、働き方改革の対応を求められる今、AIを核とした業務の自動化推進を検討してはいかがだろうか。

AIを使った作業自動化の一例

 

SID : 00103003

執筆=岩元 直久

執筆=岩元 直久

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