ケースで学ぶ職場のトラブル防止法(第9回)

出向・配置転換をめぐるトラブル事例

2019.02.18

クリップについて

 「出向」とは、雇用契約を維持したまま、業務命令によって社員を子会社や関連会社に異動、就労させることをいいます。

 一方、「配置転換」とは、同一の会社内において職務や勤務場所を変えることをいい、転勤を伴うものと転勤を伴わないものとがあります。

 厚生労働省発表の「平成26年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、「出向・配置転換」に関する相談件数は9458件、全体の3.3%となっています。

 「出向・配置転換」に関しては、労働協約や就業規則に配置転換がありうる旨の規定があり、一般的な配転命令権の範囲内で行われている限りは、会社からの命令としてこれを行うことは可能です。しかし、配置命令権の範囲で行われていた場合であっても、権利乱用と見なされるケースもあります。

2種類の出向

 「在籍出向」とは、元の会社の社員としての地位を維持しながら、他の会社の指揮命令下で就労することを指します。出向に際しては、基本的には社員の同意を必要としますが、判例上、包括的な同意がある(さらに社員の個別の同意を得る必要はない)と解釈できる場合は、会社に出向命令権を認められます。

 ただし、出向に伴いその社員の労働条件が悪くなるときは社員の同意を必要とします。また、会社の出向命令権の行使に関しては権利の乱用は許されません。

 一方、「転籍出向」とは、元の会社との労働契約関係を終了させ、新たに他の会社と労働契約関係を締結し就労することを指します。会社が一方的に転籍を命令することは認められず、社員の個別的な同意を必要とします(図表1参照)。

 事例1 [出向に際し社員の同意を得なかった]
A社は、社員Bを関連会社に出向させることにしました。この際、A社とこの関連会社では労働条件が異なります。具体的には、A社は、週の所定労働時間が35時間なのに対して、関連会社は40時間です。Bは同意もしていないのに出向によって自分の労働条件が下がるのはおかしいと会社に苦情を言いました。

 社員の出向に関する判例を見ると「真に同意に値するものである限り、明示とか個別的なものに限る理由はなく、暗黙あるいは包括的態様のものでも足ると解すべきである」として、社員の個別的同意がなくても会社が出向を命じ得ることを認めています。

 つまり、一般的には社員の同意なく出向をさせることができるということです。ただし、この場合のBは出向することによって労働条件が下がるのですから、社員の個別の同意を必要とすることになります。

 事例2 [転籍出向であるのに社員の同意を得なかった]
C社は、社員Dを子会社Eに部長待遇で出向させることにしました。C社に余剰人員が出たため、今のところ景気のいい子会社Eに転籍してもらうことにしたのですが、Dはこれに感づいたのか、「自分はこの転籍出向に同意はしていない。無理に転籍させるのであれば出るところに出る」と上司に怒りを爆発させました。

 前述の通り、出向には「在籍出向」と「転籍出向」があります。在籍出向は、出向元の会社に籍を残したまま他の会社で就労する形態であるので、例えば、就業規則に「業務上の必要がある場合には、配転を命ずることができる」といった規定が設けられていれば、会社は労働契約上、社員の個別の同意がなくとも出向を命ずることができます。

 転籍出向は、出向元との労働契約を終了して、他の会社と新しい労働契約を締結し、就労することをいいます。このとき会社が、一方的に労働契約を終了することはできませんから、社員に転籍出向を命ずる場合は、必ず社員本人の個別の同意を得ておく必要があります。

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