情報のプロはこう読む!新聞の正しい読み方(第17回)

「飛ばし記事」でも「誤報」とまでは言えない(上)

2019.11.21

クリップについて

 前回は、スクープ記事のリード文でよく使われる表現について説明しました。では、逆にスクープを逃した側の新聞社はどういう表現を使うのでしょう。

 他紙が書いたニュースについて後から報じることを、新聞業界では「追いかける」といいます。「後追い記事」「追っかけ記事」などと呼ばれ、記者としては一番書きたくない原稿です。

 他紙がスクープを放った場合、その分野の担当記者はすぐに真偽を取材で確認します。その結果、他紙の報道が正しいと分かった場合、速やかに記事を掲載しなければなりません。ライバル紙にスクープが載ったのが平日か土曜日の朝刊であれば、午前10時くらいまでには確認を終えて、その日の夕刊に間に合うよう原稿を出す必要があるのです。

 実は、こうした後追い記事では、「〜であることが◯日、わかった」という表現がよく使われます。

 厳密に言えば、「ライバルの◯◯新聞が報じたのでわかった」のですが、日本の新聞はそうは書きません。ただ、「わかった」と書くのです。例えば、M&Aのスクープ記事を追いかけるケースなら、「A社とB社が合併する方針を固めたことがわかった」といった具合です。

 もちろん、これにも例外はあります。「わかった」と書いているからといって、全てが後追い記事とは限りません。特に「捜査関係者への取材でわかった」「◯◯新聞の調査でわかった」などと、わざわざ情報源や取材方法に触れている場合は、独自記事の可能性が高いとみていいでしょう。

 しかし、例えば「〜の方針を固めたことがわかった」という表現であれば、追いかけ記事である可能性が高いと判断できます。前回説明したように、「〜の方針を固めた」や「〜の方向で最終調整に入った」といった表現は記者がスクープを狙うときの表現です。本来、わざわざ「わかった」を付ける必要はないのです。

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執筆=松林 薫

執筆=松林 薫

1973年、広島市生まれ。ジャーナリスト。京都大学経済学部、同大学院経済学研究科修了。1999年、日本経済新聞社入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年に退社。11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版)『迷わず書ける記者式文章術』(慶応義塾大学出版会)。

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