アスリートに学ぶビジネス成功への軌跡(第3回)

パイオニア、大谷翔平の活躍に見る人材活用術

2018.09.19

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 2018年シーズン、メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスに入団した大谷翔平選手。打者と投手の両方をプレーする、いわゆる二刀流に挑戦している野球選手だ。プロ野球界では長年、二刀流の選手が存在しなかったため、日米ともデビュー前には二刀流の成功を疑問視する声があった。しかし日本では一流の活躍を見せ、メジャーリーグでも6月8日に右肘内側側副靱帯のケガで戦列を離脱するまで二刀流で大活躍を続けた。

 今回は、日米でパイオニアとして結果を出し続ける大谷選手の著書『不可能を可能にする大谷翔平120の思考』などからビジネスへのヒントを探ってみよう。

 高校生時代から投打共に規格外の才能を有していた大谷選手。2013年に北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)にドラフト指名されて日本プロ野球界に入った。チームの主力に成長した大谷選手は、投打両方で活躍し、2016年にファイターズのリーグ優勝と日本一に貢献した。

 その活躍から同年、投手と指名打者の2部門でベストナインに選出され、パシフィック・リーグの最優秀選手に輝いた。投手としては日本プロ野球最速である球速165km/hを記録している。日本での5年間の成績は、85試合に登板し、42勝15敗。勝率は実に7割を超える。打撃では403試合に出場し、打率2割8分6厘、48本の本塁打を記録。このように、まずは日本プロ野球界において見事に二刀流を成功させた。

 今年2018年、エンゼルスに移籍。先発登板(同一シーズン)して、3試合連続本塁打を放つという、1930年のベーブ・ルース選手以来の離れ業をやってのけた。その結果、大谷選手の二刀流は米国でも大きな注目を浴びている。日米で前例のない挑戦を続ける大谷選手。「誰もやっていない不可能と思えること」に挑むその原点はどこにあるのだろうか。

球速160km/hを投げる高校生のパイオニア

 岩手県の高校野球の名門校である花巻東高校に入学した大谷選手。その時点の目標は、投手としてストレートの球速を150km/h台にすることだった。当時の高校野球での最速は155km/hであり、日米のプロ野球界でも160km/h台を記録するのは少数だった。大谷選手が自分で立てた目標は、高校球児のトップクラスという、常識でいえば妥当なものだった。

 それに対して、同校野球部の佐々木洋監督は、「160km/hをめざせ」と指導した。その際にボクサーのモハメド・アリの名言、「不可能とは、自力で世界を切り開くことを放棄した臆病者の言葉だ。不可能とは、現状に甘んじるための言い訳にすぎない。不可能とは、事実ですらなく単なる先入観だ。(中略)不可能なんてあり得ない」も伝えたという。

 不可能とも思える目標を提示された大谷選手だったが、監督やコーチとともに、160km/hを投げるために必要な投球フォーム・身体能力を身に付けるための練習メニューを考え実行した。ただひたすらに、不可能を可能にするための試行錯誤を繰り返し続けたのである。

 すると、最初は不可能と思っていた目標だったが、次第に手応えを感じるようになっていった。そしてついに高校3年のとき、夏の甲子園大会の岩手大会で、「160Km/hを投げる高校生」のパイオニアになったのである。これによって最初から無理と決めつける先入観が、自らの可能性を否定しているというアリの名言を実感することになった。同時にパイオニアとして目標を達成するために、何をすべきかを自分で考える思考力も育まれた。

メジャーではなくファイターズを選んだ理由… 続きを読む

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執筆=峯 英一郎

執筆=峯 英一郎studio woofoo

ライター・キャリア&ITコンサルタント。IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行う。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。

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