人気会計士が語る、小さな会社の経営“これだけ”(第18回)

決算書という商品ではなく元気という価値を売る

2020.04.03

クリップについて

 顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。その第18回は、「うちの会社は何を売っているのか」を短い言葉で表現することの大切さです。

 会計事務所という職業を知っている人なら、会計事務所が何を売っているのかをイメージしたとき、確定申告書、決算申告書、税務相談、節税対策などの商品が浮かぶと思います。一般的には、会計事務所の所長は自分たちが何を売っているのか社員に説明していません。社員は決算書などを売っていると思っているものですから、お客さまが来られても挨拶しようともしません。自分の仕事が中断される面倒な存在としか、お客さまを見ていません。

 私自身の経験でも、昔、お客さまが見えられたら全社員で立って挨拶しようと社員に提案したら、集中力が途切れるからダメだと大反対され断念したことがあります。職人の集団ですから、お客さまより自分の技術・仕事を大事と考えているところがあります。

「お客さまを元気にする」ということ

 そういう業界の中で、古田土会計は元気を売っています。お客さまをウエルカムボードでお迎えし、全社員が立って笑顔で「いらっしゃいませ」「おはようございます」と挨拶します。必ず「おはようございます」「こんにちは」と言います。「いらっしゃいませ」だけでは一方通行だからです。ディズニーランドでも「いらっしゃいませ」は言わないそうです。

 その他にも、お客さまとその会社が元気になる商品・サービスがたくさんあります。社員が挨拶、朝礼、掃除、異業種交流会などに本気になって取り組んでくれるのは、古田土会計が売っているものが、決算書ではなく、元気だということを私が社員に繰り返し教育しているからです。

 元気を売っているわけですから、お客さまが元気になっていただけることには全社員で一生懸命取り組むわけです。皆さまの会社も、「うちの会社は何を売っているのか」を短い言葉で表現すると、社員に伝わり、経営方針が徹底できます。商品とは、お客さまが店を出るときに持って帰るもの。価値とは、お客さまが店を出るときに感じるものです。ですから、お客さまが感じる価値を高めるために、全社員が頭を使うことが大事です。

お客さまの手本となれる会社をつくる

 古田土会計が提供できる元気は、3つあります。

 1つ目は、元気な社員を育成しています。社風が明るく元気です。私どもの元気な朝礼には、年間600~800人が見学に来られています。

 2つ目は、お客さまが元気になる古田土式月次決算書です。月次決算書は、過去ではなく未来を向いています。どこに手を打てば利益が出るか、その会社の全社員が分かるように工夫され、どこに手を打てば財務体質が改善されるか、幹部が理解できるように工夫しています。

 3つ目は、古田土会計自体が元気であるということです。創業以来34年間毎年増収、この10年間で売り上げは2倍になっています。赤字は一度もなく、無借金、自己資本比率90%、売上高経常利益率20%をキープしています。

 会社を絶対潰さないようにするために、損益計算書ではなく貸借対照表中心の経営をしています。総資産を少なくするために、不動産は所有しません。総資産に対する現預金の比率は70%を超えています。

 さらに、私に万が一のことが起きた場合に社員が混乱しないように、次の社長や役員の名前を経営計画書に書いてあります。私の引退の時期を決め、後継者に覚悟させ、教育しています。私の株式を社員に額面で譲っていき、私の一族による会社への介入を防いでいます。

 ちなみに、会計事務所は資格商売で、私の子どもが後継者になれない可能性があるからです。一般の中小企業では子どもさんが後継者になる場合は、株は後継者に相続させるのがよいと考えています。

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執筆=古田土 満

執筆=古田土 満

法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。

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