人気会計士が語る、小さな会社の経営“これだけ”(第21回)

「うるさく、細かく、しつこく」

2020.07.03

クリップについて

 顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回の第20回に会社を躾けることの大切さと、実際にそれを担うのは管理職であることを解説しました。そして、今回、第21回は、そうした管理職には必要なのは、「うるさく、細かく、しつこく」することだと古田土氏は力説します。

 「会社を躾ける」と一言で言っても、成し遂げるのは難しいことです。

 社員には、優秀な社員が2割、普通の社員が6割、優秀でない社員が2割いるといわれています。大きなミスや失敗をするのは、ベテラン社員と優秀な社員、小さなミスや失敗を繰り返すのは優秀でない社員です。良い組織をつくるためには、社員のモチベーションを上げることと、業務ミス、クレームをなくすことであると思っています。

 まず社員のモチベーションを上げるには、給与や人事制度、社員教育よりも、仕事を通して社員がお客さまから褒められたり、感謝されたり、自分の成長を実感したりできること、そして何より社長や上司が自ら立派な人間になる努力をして、社員から尊敬されることであると信じています。

 尊敬されるためには、社長が公私混同しないこと。社長だけが高級車に乗ったり、借金をして豪華な家を買ったりしないことです。社長の私生活が派手になると、社員の心が離れていきます。社員の給料では生活するのが精いっぱいです。社長として世間より2割、3割高い給与を社員に払っているという自信がないかぎり、私生活を慎むべきだと思います。

自分のことは棚に上げて、うるさく細かい人になろう

 次に、業務ミスやクレームをなくすこと。これにはいつも悩んでいて、解決策がありません。社員の数が増えるほど、ミスとクレームが増えていきます。しかしあるとき、株式会社ミカミさんの経営計画発表会で「これだ」という言葉に出合いました。

 会社力研究所代表の長谷川和廣氏のお話にあった「優秀な課長や係長の共通点は次の3つ。うるさい人、細かい人、しつこい人です、と断言します」という言葉です。

 私は古田土会計を含めて多くの中小企業を見てきて、物事が徹底されないもどかしさを感じていました。社員を社外研修にも出しましたが、ほとんど効果はありませんでした。「仕組みをつくる」ということでマニュアルを作成しチェックしましたが、一部の人間は形だけでやっているので大きなミス、クレームが起きています。

 何が欠けているのか、それは、リーダーがうるさく、細かく、しつこく指導してこなかったからだと気付きました。当然、周囲から嫌われますから、多くのリーダーはやろうとしません。また、部下を厳しく指導するなら、「自分に実力と実績があってこそ言える」と思っている人も多いと思います。

 しかし、組織を良くしたい、社員を育てたいという愛情があれば、「自分もまだ全てはできているわけではないけれど、自分のことは棚に上げて、これからは、うるさい人、細かい人、しつこい人になります」と宣言したらどうでしょうか。

細かいミスを見逃せば、大きなミスを生む

 社長、役員、幹部が愛情を持って人を育てるのに一番必要なことは、自分と人に対する厳しさです。古田土会計の社員は現在181人です。もうすぐ190人になります。人数が増えるほど質が落ちています。会計と税法が基本ですが、会計の質が落ちています。税法は税務調査もあり、ミスがあれば発見されます。その分、勉強もします。コンピューターも間違いがあれば指摘してくれます。

 しかし会計は教育、指導、チェックを徹底しないと、大きなミスになります。会計人の基本は仕訳にあります。仕訳が会計事実を正しく表現しているのか、現金、預金、売掛金などは実態があるのか、仕掛品製品の評価は正しいのかなどを見ます。会計が正しく、美しい貸借対照表、損益計算書を作成したものを受けて、正しい申告をするのが税理士です。

 私たちの仕事は尊く、社会にとってなくてはならない仕事です。この仕事にはやりがい、生きがいが持てます。そのために、私は役員、部長、リーダー、サブリーダーに言います。「私と共にうるさい人、細かい人、しつこい人になりましょう。実行しない人は、仕事と部下に対する愛情のない人です」と。

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執筆=古田土 満

執筆=古田土 満

法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。

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