人気会計士が語る、小さな会社の経営“これだけ”(第22回)

魂は細部に宿る

2020.08.07

クリップについて

 顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回の第21回は、管理職が、「うるさく、細かく、しつこく」することの重要性を説明しました。そして、今回、第22回では、「うるさく、細かく、しつこく」すべきなのは、会社は、細かい部分を大切にしないといけないからだと、古田土氏は解説します。

 なぜうるさく、細かく、しつこいリーダーでなければならないのでしょうか。それは見逃しがちな細かい部分が、会社にとって重要だからです。

 古田土会計では、パートさんを含む全社員181人に、毎月10日までにグループ全社の損益計算書と貸借対照表が配布されます。社員は経営計画書の諸表編に前月の実績を記入し、前年実績と当期目標、当期実績を比較検討して素早く手を打っていきます。また総勘定元帳は社員の休憩室に置き、誰でも内容を見ることができます。

 社長である私の給料もオープンにして、私自身が公私混同をしないようにしています。この公私混同が、社長にとっては「そのくらい」という細かなことでも、中小企業の経営にとっては大きなテーマだからです。

 中小企業でも30年以上続いている会社はたくさんありますが、昔は創業者に公私混同している経営者を多く見かけました。もっとも、昔は社員もそれを気にしませんでした。社員の給料が毎年上がっていったからです。社員は、交際費が使え給料が上がっていれば文句を言いません。経営者が、実際には会社で働いていない奥さんや子どもに給料を出していても、大目に見てくれました。ただし、税務署からは厳しくチェックされました。

 今は、社員の給料が昔のように上がりません。経費の使い方も厳しく言われます。このような時代に経営者だけが多くの交際費を使い同族のみを優遇していたら、社員の心は離れていきます。経営者として大事なことは、事業のためや、社員の生活を豊かにするため、働く環境を良くするためにお金を使うことがあっても、社長個人の生活のために会社のお金を使わないことです。少なくとも、社員の目から見て、「社長だけが得をしているのではないか」と思われないようにすることです。

細かいルールがないと、不信が大きくなっていく

 社員から誤解を受けやすいものに、出張に伴う日当と宿泊費があります。日当は世間相場があり、あまり高額だと税務署から否認されます。また否認されない額でも、社長と一般社員の差が大きいと、社長だけが得をしていると思われます。

 さらに問題なのが宿泊費です。人によって宿泊するホテルはさまざまですから、実費で精算するのは問題ありません。例えば、1泊20万円でも大丈夫です。実費のほかに1日いくらと日当と同じように定額で支給する方法もあります。例えば上限を1日5万円と定め、ザ・リッツ・カールトンホテルの6万円の領収書が添付してあれば問題はありません。

 ところが、1日5万円をもらいながら、実際は1万円のホテルに泊まったとしましょう。社長は4万円もうかったと思うでしょうが、社員はどう思うでしょうか。多くの社員は自分も同じようにと、社長のまねをします。1万円の宿泊費をもらいながら、3000円のカプセルホテルに泊まったり、車の中で寝たりする社員も出てきます。定期代をごまかす社員も出てくるかもしれません。

 定額支給にする場合でも領収書を添付させて、差額は20%以内というルールをつくり厳しくチェックする体制にしないと、やがて社員は不正を起こすようになるのです。例えばこれが、細かいことがどれだけ大切かということです。

社長の公私混同を禁じ、社員の公私混同にも厳しく対処する

 経営者の行動は、全社員にいつも見られています。特にお金の使い方は厳しく見られます。社長が社員に「ごちそうする」と言ってお金を支払い、社員にお礼を言わせ、それを会社の経費にしたら社員はどう思うでしょうか。

 魂は細部に宿ります。ささいと思われることのお金の使い方で尊敬もされ、信用もなくします。会社の他のことも同様です。

凡事徹底。
日常の細事を大切にすること。
挨拶は笑顔ですること。
掃除は毎日やり、身の回りをきれいにすること。ゴミが落ちていたら即拾うこと。
電車の中では年配者などに席を譲ること。
女性は電車の中で化粧をしないこと。
このような行為は恥ずかしいと思うこと。

 会社では社長が細部にまで気を配り、率先して公私混同をしないように心がけ、社員の公私混同にも厳しく対処すべきです。小事を大切にすることによって、大事が成し遂げられます。

 自分の会社を立派な会社にしようとしている社長は、「魂は細部に宿る」この言葉を戒めとすべきだと思います。

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執筆=古田土 満

執筆=古田土 満

法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。

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