人気会計士が語る、小さな会社の経営“これだけ”(第23回)

報・連・相は、上司から部下にする

2020.09.04

クリップについて

 顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回の第22回は、経営者が「うるさく、細かく、しつこく」すべきなのは、会社は、細かい部分を大切にしないといけないからだと説明しました。しかし、経営者がいくら細かいことを大切にしても、顧客からのクレームがなくなることはありません。そのクレームで多くの場合、問題になるのは「報・連・相の不足」です。その改善策として古田土氏は、上司が部下への「報・連・相」を意識することを挙げます。

 古田土会計では、毎日のようにクレームや業務ミスの報告があります。お客さま件数2200社、社員数181人ですから、クレームやミスが発生する比率として考えれば、決して多いわけではありません。

 しかし、1つひとつのミスやクレームは、そのお客さまにご迷惑をかけ、信頼を失わせてしまったことであり、大変申し訳なく思っています。クレームで一番多いのは「報・連・相の不足」です。

社員に上司がいつも言う言葉は、
「なぜもっと早く相談や報告をしなかったのか」
部下はいつもと同じように下を向いて、
「すみません」
この繰り返しです。

 仕事にはマニュアルがあり、チェックリストがあり、お互いにチェックし合うルールになっていても一部の人間は守れません。

上司から聞けば、部下は報告する習慣を身に付けていく

 そこで考えました。

 報・連・相は部下から上司にするのではなく、上司から部下にする。上司は部下に対して、

(1)毎日の仕事の進行状況
(2)お客さまからの依頼や滞っている仕事の確認
(3)お客さまに訪問するとき、月次決算書のどこを重点に説明するのか
(4)何を提案するのか

 こういった項目を事前に確認し、翌日には、その結果を上司から部下に聞きます。1日の中で10分くらいを割けば十分です。上司が部下に毎日「うるさく、細かく、しつこく」聞けば、部下は根負けして、自分から報・連・相をする習慣を身に付けていきます。

競争意識の少ない人を成長させるには

 大企業では自分が出世したいためや評価されたいために、社員が社内で競争をします。一方、中小企業では社内競争が少ないのが現実です。そういう環境でも、目標や競争は必要です。なぜかといえば、会社と個人が成長するためです。

 競争意識の少ない人を成長させるためには、上司が「うるさく、細かく、しつこく」部下を指導することが必要です。その具体的な方法の1つが、上司から部下に「うるさく、細かく、しつこく」報・連・相を求めることなのです。報・連・相は、下から上への一方通行ではなく、双方向であるべきです。愛とは、関心を持つことです。部下への愛は、自分から声をかけることです。

 さて、2番目に多いクレームは、「提案がない」ということです。あるお客さまからは、「さすが古田土会計という提案が一度もない」「期待が大きい分内容が伴っていない、計算屋になっている、情報の提供が少ない」など、消極的な姿勢を批判するクレームが多くあります。

 古田土会計の社員には、ベテラン、中堅に関係なく、クレームと感謝の言葉、両方をいただいています。会社が提供するサービスの質は、できるだけ均一でなければならないので、お客さまに提案して喜ばれたり、感謝されたり、ありがとうと言ってもらった事例を全社員から集め、編集し、チェックリストにまとめることにしました。

 古田土会計の取り組みは、金融、会計、相続、事業承継、経営計画など、広範な分野に及んでいます。社員が自分の専門分野以外でも、お客さまのお役に立ちたいと思い、不器用ながらも毎回1つでも新しい提案をしていければ、社員の実力も付き、お客さまにも認められ、一流の会計人になれると信じています。

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執筆=古田土 満

執筆=古田土 満

法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。

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