部下のやる気に火をつける方法(第6回)

声の大きさと、思わぬ一言をチェックしよう

2019.08.08

クリップについて

 パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。今回は、その前提となる、言葉に出ていない部下の心を見抜く技術の第6回です。部下の態度で、さまざまな心理を読み取ることができます。言葉の中身だけでなく、声の大きさや、発言したときの様子に注意を払えば、部下の本音が見えてきます。

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(8)

声のボリュームはその人のエネルギーと比例する

 アサヒビールが「夕日ビール」と悪口を言われてなかなか売れない頃、「スーパードライ」を大ヒットさせ、登り竜のような勢いを見せたのが、当時の樋口廣太郎社長でした。実は私が1992年に「国際パフォーマンス学会」という学会を立ち上げた時に、無理やり会長就任をお願いしたら引き受けてくださった男気のある人です。

 その樋口さんが私のパフォーマンス学の話に興味を持ち、「パフォーマンス学って何?」というわけで、「自己表現の科学です」などといろいろとデータを見せてお話ししたことがあります。

 40分間ほど話を聞いてから、樋口さんはアッハッハと笑い出しました。そして、「いや、佐藤さん、パフォーマンス学ってね、簡単なことなんだよ。ちょっぴりの知性とでかい声、これがあれば全部OK。アッハッハ」とさらに笑っています。

 そう言われてしまうと身もふたもないという感じですが、確かに声にはその人の心のエネルギーや体調の状態が正直に表れます。人間が声を出すときの音声要素全てをひっくるめて、「周辺言語(パラランゲージ)」と呼びます。声の高低、ボリューム、息漏れ、アクセント、ポーズ、スピードなどがここに含まれます。嘘をつくときには、ごまかしたい一心でつい言葉が速くなったり、逆に答えが見つからないためにスピードが突然落ちたりします。不自然な間(ポーズ)が空くのもそんなときです。

 このように、話すスピードはもちろん大事です。けれども、声から部下の調子を見抜く際、最も分かりやすいのはボリュームです。会議中にマイクで話す場合は、声の大きさはごまかされてしまいます。でも、朝、会社に到着したときに、「おはようございます」と言う声や、会社の廊下でのささいな立ち話のときの声のボリュームが、ほぼその人のエネルギーを表しています。普段から、部下の声の大きさにも留意してみましょう。

 この話を社員研修などですると、「もともと声が小さいのです」と開き直る人がたまにいます。でも、それこそが問題です。会社で給料をもらっているのに今も声が小さいのは、相手に自分の意思を届けたいという意志と努力が足りない場合が多いのです。

 もちろん体の構造的に声帯のサイズが小さかったり、吸い込む空気が少ないため音声をつくる土台となる「呼気」が浅かったりする人もいます。とはいえ、自分でトレーニングをして声を大きくしようと思ったら、実は誰でも大きくなります。腹式呼吸の練習をして、吸気と呼気を長く引き伸ばす「ロングブレス」の癖をつけること。口の開け方を大きくして、言葉を明瞭に発音すること。こうして意識して大きな声で話すよう指導することも上司の役目の1つです。もちろん上司も、いい声で部下に話しましょう。

まとめ

言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(8)

◆声はその人のエネルギーや体調が表れます。
◆普段より声が小さいと気付いたら「今日は元気がないね、大丈夫?」と聞くだけでも違います。

 

口が滑って出たとっさの一言こそが本音… 続きを読む

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執筆=佐藤 綾子

執筆=佐藤 綾子

パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。

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