パフォーマンス心理学の最新の知見から、部下をやる気にする方法を紹介する連載。その前提となる、言葉に出ていない部下の心を見抜く技術の第9回です。ダイバーシティが叫ばれる中、部下には男性も女性もいるでしょう。男性と女性では対応に違いがあることを覚えておきましょう。
言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(14)
同じ“見つめ”でも男女で視線の意味が違う
見つめるという動作には、その時のその人の感情が確実に反映されます。「EPPS(Edwards Personal Preference Schedule)」という心理テストと、相手を見つめる時間とを組み合わせると面白い結果が出ました。
下の図を見てください。相手を長時間見つめている男性の欲求傾向を取ると、顕示欲求と変化欲求の強いことが分かったのです。自分を見てほしい、あるいはどんどん情報を吸収して自分が変化していきたい、そんな男性たちが長時間相手を見ています。
一方、女性は養護欲求と異性愛欲求、つまりあなたを守ってあげたいという気持ち、あるいは異性を愛し愛されたいという欲求が強い人はアイコンタクトが長いことが分かりました。男性同様、情報を吸収して自分を変えていきたいという欲求の高さも見て取れます。
さて、こうなると、男性上司が女性部下に話をするときの注意点があります。答えは明らかでしょう。あまり女性の部下の顔をしげしげと長時間見つめないことです。「今日はきれいな顔だな」とか「変な顔だな」と思っても、あからさまに視線に出てしまうと、女性は敏感に反応します。女性の意識の中では「あら、嫌だ。あんなに長く見つめていて」と感じるわけです。
逆に、女性が長時間、男性上司の顔を見ているときに、それが「仕事熱心だ」と断定してしまうと間違ってしまうケースもあります。異性愛欲求だったり、「うちの上司は危なっかしいから私が守ってあげなくちゃ」と思って見つめていたりする可能性もあるわけです。女性の見つめと男性の見つめは意味が違うということを、グラフを見てちょっと頭に入れておくと、上司と部下の関係でも男女の組み合わせの中で失敗が少なくなるでしょう。
言葉に出ていない部下の心を見抜く技術(14)
◆男性と女性では、見つめる意味が違います。
◆特に女性部下をじっと見つめ続けることはNG。話の要点部分などのポイントで確認の意味を込めてアイコンタクトを取るといいでしょう。
男性部下より女性部下の方が分かりにくい… 続きを読む
執筆=佐藤 綾子
パフォーマンス心理学博士。1969年信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士後期課程満期修了。日本大学藝術学部教授を経て、2017年よりハリウッド大学院大学教授。国際パフォーマンス研究所代表、(一社)パフォーマンス教育協会理事長、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座R」主宰。自己表現研究の第一人者として、首相経験者を含む54名の国会議員や累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントとして信頼あり。「自分を伝える自己表現」をテーマにした著書は191冊、累計321万部。
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