“新常態”に対応せよ(第1回)

人事労務の働き方改革・コロナ対策

2020.11.11

クリップについて

 勤怠管理、給与計算、採用、教育など、会社運営に欠かせない役割を担うのが人事労務だ。実は昨今、人事労務に求められるものが変化し、多くの企業が業務の見直しを迫られている。

 中でも企業にとって、人事労務関連で切迫した課題なのが働き方改革への対応だ。働き方改革では、2019年4月から大企業を対象に、臨時的な特別の事情がない限り月45時間・年360時間までとする残業時間の上限規制が始まった。2020年4月からは、中小企業もこの上限規制の対象だ。

客観的方法による労働時間の把握

 残業時間を適正な範囲に収めるためには、その前提として労働時間の正確な把握が欠かせない。そこで残業時間の上限規制に伴い、大企業・中小企業とも「客観的方法による労働時間の把握」が必須になった。

 客観的な方法については、厚労省が「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」というガイドラインを示している。今でも、勤怠管理に手書きの出勤簿を利用する企業もあるが、この方法は手書きの自己申告となるため、不正申告やサービス残業の温床になりやすい。早急な改善が必要だ。

 従来と同じく、タイムカードによる記録を続ける企業も少なくない。しかし始業・終業時刻しか記録できないタイプでは、残業時間の管理が徹底されない可能性がある。いつの間にか残業時間の上限規制に触れていたという事態になりかねない。打刻機能しかないタイムカードの場合、集計作業はExcelなどの表計算ソフトを使って、別途行う必要が生じる。そうした手間を負担する労務担当者の労働時間が増えてしまう。

新型コロナでテレワークを導入したら勤怠管理も変える

 働き方改革に対応するには、従来の勤怠管理では限界がある。それに加えて、勤怠管理に変化を促しているのが新型コロナウイルス感染拡大だ。もともと働き方改革でも多様な働き方に対応するためテレワークの推進はうたわれていたものの、熱心に取り組む企業はそれほど多いとはいえなかった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの企業がテレワークを取り入れ、働き方改革が一気に普及した。

 テレワークを本格的に導入すると、従来の人事労務のやり方では対応しきれないのは明らかだ。在宅勤務では、タイムカードやICカードによる勤怠管理は難しい。そのため、「客観的方法による労働時間の把握」を実現するには、テレワークにも通用する新しい方法を導入するしかないだろう。

 テレワークをする一般社員だけでなく、人事労務担当者のためにも新しい方法の導入が好ましい。勤怠管理など人事労務情報は個人情報を含むので、非常に高いセキュリティ対策が求められる。個人情報を処理するからといって出社しなくてはならないとしたら、人事労務担当者だけはテレワークができないことになる。働き方改革から取り残され、新型コロナ感染のリスクも増加してしまう。自宅を含めた社外からも、安全には勤怠管理情報などを処理できるようにする必要がある。

 このように働き方改革、新型コロナウイルスへの対応、そして導入すべき新しい人事労務の業務のやり方として注目が高まっているのがクラウド型の人事労務ソフトの導入だ。かなり以前から、人事労務業務の一つである給与計算については、その煩雑さから給与計算ソフトを導入していた企業も少なくないだろう。それだけでなく、勤怠管理や人事労務手続きに関しても、スマホやタブレットを通じて情報を集め、それをクラウド上に保管して、安全に運用できるソフトが次々と提供されている。

 もちろん、テレワークを実行している従業員に対する勤怠管理、それにより生まれるデータに対して、セキュリティ上の問題をクリアした状態で外部からアクセスさせるので、コロナ後の“新常態”での人事労務にも適する。

 今後、中小企業では人手不足がますます深刻な問題になる。そうした中では、営業や接客、製造や開発といった表の業務に人手を割くには、経理財務、人事労務、総務といったバックオフィスの業務の効率化が必須になる。中でも人事労務は、優秀な人材確保と密接に関係する上に、公的な規制や手続きも多い。

 間もなく年末調整の時期となる。1年の中でも担当者の負担が大きいタイミングである。今年は基礎控除額、各種所得控除などを受けるための要件が改正された。その対応もしなければならない。一刻も早く手を打つべきではないだろうか。

クラウド型人事労務ソフト導入のメリット

SID : 00153001

執筆=山本 貴也

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

あわせて読みたい記事

PAGE TOP

閉じる
会員登録(無料) ここでしか読めないオリジナル記事が満載
閉じる