トップインタビュー(第9回)

「社員大事」の経営で利益生む

2015.12.03

クリップについて

小松製菓会長 小松 務氏

 岩手県の名物で小麦粉を原料にした「南部せんべい」の製造・販売を手掛ける小松製菓。創業者の母から継いだ「社員こそお客様」の思想を貫き、社員満足度の高い経営を実践する。社員への手厚い施策を可能にするため、確実に営業利益が得られる体制を整えてきたと語る。

──小松製菓は小麦粉を原料とする岩手県名物「南部せんべい」の製造・販売で業界トップ。せんべい市場は縮小傾向ですが、小松製菓は販売会社の「巖手屋」、洋菓子店の「タルトタタン」も加えたグループ売上高が約37億円と堅調ですね。どんな方針で経営をしていますか。

TT-1-9-1_k小松:小松製菓は私の母・シキが戦後、始めた南部せんべい屋が原点です。子どもの頃から苦労に苦労を重ねた母は、「つらいことがあっても感謝の心、“おかげさま”の気持ちを持つ人は必ず幸せになる」と説きました。私もその考えを引き継いで経営をしています。

 私たちの会社が現在あるのは、せんべいを買ってくださるお客様のおかげ。原料を供給してくださる材料屋さんのおかげ。そして社員みなさんのおかげ。「感謝と創造」を社訓としています。

「社員こそお客様」

──「従業員満足度」の高い経営を徹底していることでも知られています。

小松:母は「社員こそお客様」とよく話していました。途中で辞めてしまった元社員は会社のことは良く言いません。彼らを敵に回したら会社の未来はない。「うちの会社はすごい」と喜んでもらえるように、大事にしろと。その遺志をくみ、当社では色々な取り組みを行っています。

 例えば定年の撤廃。60歳定年だった頃、まだまだ元気な社員は「もっと働きたい」「仲間と一緒にいたい」と涙ぐみながら辞めていきました。これはおかしいと2002年に定年を65歳に延長。その後、本人の希望次第で65歳以上でも勤められるようにしました。今は70歳超の社員が何人もいます。

 就業時間内に社員の誕生会も開きます。260人の社員のうち、その月に誕生日を迎える社員全員を呼び、常務でもある私の妻が作った手料理でもてなします。お土産にタルトタタンのケーキを1ホール持ち帰ってもらいます。

 2006年には退職後の社員にも喜んでもらおうと、独自の「幸せ年金制度」を始めました。勤続年数や出勤率に応じて、1人2万~5万円のお小遣いを80歳になるまで年に2回差し上げるものです。毎回、小松製菓が経営する「四季の里」という和風料理店に招き、手渡ししています。おいしい食事をしながら昔話に花を咲かせる機会でもあり、みなさん、とても楽しみにしてくれています。

──社員の子育て支援にも熱心に取り組んでいますね。

小松:良い仕事をしてもらうには、家庭が幸せであることが必要だと考えています。育児休業制度、育児短時間勤務制度などを整え、保育園に通園する子どもがいる社員には1カ月1万円の助成金を出しています。3年前からは月に1回、就業時間中に外部から講師を招いて子育て勉強会を開催しています。子どもを素直に健やかに育てるために親はどう接すれば良いのかを学ぶもので、子どものいる社員は目を輝かせて聞いていますよ。

 社員はみんないとおしく、かわいい。家族のようなものです。私どもの会社は零細で力はないけれど、社員に喜んで来てもらえる会社にしたいと、やれる範囲で色々な施策にチャレンジしています。

──感謝の心やおかげさまの気持ちを持って経営すると、社員にも伝わりますか。

小松:入社直後の社員は全くダメですよ。「はい」とも言わず、挨拶もしない。「おかげさま」どころではありません(笑)。でも1年で変わります。小松製菓には「もう一度会いたい人格を創ります。もう一度食べたい製品を作ります。仕事を通して社会に貢献します」という3つの誓いがあります。毎日の朝礼で唱和し、ミーティングで繰り返し説くことで次第にその考えが浸透していきます。会社だけでなく、家でも「ありがたい」という言葉をよく使うようになり、子供にもそう教えるようです。

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小松 務(こまつ・つとむ)

小松 務(こまつ・つとむ)

1944年、岩手県二戸市生まれ。63年、母・シキが創業した小松煎餅店(現小松製菓)に入社。主に営業・販売を担当する。2001年から現職。南部せんべいの伝統、製法を守りつつ、新しい発想の商品を生み出している。社員を大事にする経営の徹底でも知られ、『日本でいちばん大切にしたい会社4』にも取り上げられている。

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