ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第53回)

怒りの感情とうまく付き合うアンガーマネジメント

2019.12.10

クリップについて

 ゴルフをプレーしていると、ミスをするたびに烈火のごとく怒るゴルファーを見かけます。「ミスは誰でもするやろ。ミスしたからってそんなに怒らんでも……」と思いますが、ゴルフでもビジネスでも怒りっぽい人はいるものです。

 前回、今年からの新ルールは、悪意のないうっかりミスには寛容になったとお伝えしました。従って、これからのゴルフプレーはこれまで以上に心にゆとりを持つことが必要とされるでしょう。心にゆとりを持つ大切なポイントは、怒りをうまくコントロールすることです。今回は、ビジネスにも役立つスキル「アンガーマネジメント」についてゴルフの面から語ってみたいと思います。

「怒り」には良い面、悪い面がある

 「怒り」は、ゴルフにどのような影響を与えるでしょうか?

・スイングが速くなる(故にミスしやすくなる)
・力が入りやすくなる(故にミスしやすくなる)
・心がノンフローになり、パフォーマンスが下がる
・場の雰囲気が悪くなる
・楽しくない
……など、マイナスの影響ばかりが頭に浮かびます。

 しかし、怒りに良い影響がないわけではありません。人は怒ると、「ノルアドレナリン」と「アドレナリン」という2つのホルモンが分泌されるそうです。ノルアドレナリンは意欲や集中力を高めてくれる神経伝達物質です。ただし、過剰に分泌されると怒りの感情を高めてしまうホルモンだと知られています。アドレナリンは、筋肉と心臓の働きを高めて身体能力を向上させるホルモンです。このホルモンが分泌されると、心拍数が増え、血圧が上がり、血流量が増します。よって怒りは、意欲や集中力を高め、身体パフォーマンスを向上させる面があるといえます。

 ゴルフのプレー中のように、冷静な判断が求められるシーンや集中力を発揮しなければならない状況では脳をフルに働かせる必要があります。ですからある程度の興奮状態は問題ありませんが、その限度を過ぎれば脳の働きを低下させてしまいます。つまり、怒り過ぎはホルモンの過剰分泌状態、負荷がかかり過ぎている状態ともいえます。

 レスリングやボクシングなどの格闘技系スポーツに限らず、あらゆるスポーツで「ゾーンに入る」といった表現をしますが、ゾーンに入った状態は、まさにこのホルモン分泌のピークを持続させている状態といってもいいでしょう。いずれのスポーツも怒りに感情を任せてしまえば、冷静さに欠き、必要な判断が下せなくなり、動くはずの体は硬直し、望むべきパフォーマンスはかなわなくなるでしょう。それはゴルフも同じで、怒りが態度に表れるほど怒ってしまうことは、パフォーマンスにマイナスの影響を及ぼすことを改めて肝に銘じてください。

なぜ人は怒るのか?怒りの正体とは?

 ゴルフやビジネスで、怒りはマイナスに働くことが分かっていても、まったく怒りのない人はいませんし、好き好んで怒る人もいません。怒るからには、それ相応の理由があるはずです。

 あなたはゴルフにおいて、どんなときに怒りが芽生えますか?

・ミスショットしたとき
・前の組のプレー進行が遅いとき
・同伴競技者のマナーが悪いとき
・ナイスショットのはずなのにボールが見つからないとき
……など、みなさんもこのようなシーンで怒りを感じた経験が少なくないと思います。

 なぜ、このようなシーンで怒りの感情が生じるのでしょうか。その理由は、「理想と現実とのギャップ」にあります。自分はナイスショットが打ちたい、という理想(願望)に対し、ミスショットしてしまったという現実が、怒りを生み出す源泉と考えられます。プレーの進行が遅かったり、同伴者のマナーが悪かったりしたときに怒りを感じたりイライラしてしまうのも、もっとサクサクプレーすべきだという理想(要望)や、マナー良くすべきだという理想(欲求)が根底にあり、それが裏切られたという現実が怒りの正体です。

 ビジネスシーンで自分に対して、相手に対しても「理想と現実とのギャップ」から怒りの感情を覚えたことはありませんか。感情のまま振る舞ってよいことは1つもありません。上司と部下の関係なら、それをパワハラと訴えられるリスクもあるでしょう。ゴルフでもビジネスでも、こうした怒りはマイナスに働くばかりです。それを防ぐのが、怒りを軽減させたり、できれば完全に消去したりするスキルである「アンガーマネジメント」です。

怒りを軽減させる方法

 ビジネスにおいて適度に怒りを表現することは「場が引き締まる」「ストレスをため込まないで済む」「行動を起こす原動力になる」といったメリットもあります。しかし、多くの場合、上述のようなデメリットの方が大きいと考えられますから、怒りをコントロールする方法としてアンガーマネジメントを身に付けたいものです。「アンガー(Anger)」は怒り、「マネジメント(Management)」は管理、つまり「怒りをうまく管理する」ための方法です。

 アンガーマネジメントは、怒りをなくしたり、怒らないように我慢したりすることではありません。怒りをうまくコントロールし、より良好な結果に導くことが目的です。ゴルフでいえば、ミスショットしたことで怒り、そのことで新たなミスを生んだり、同伴競技者に不快な思いをさせたり、楽しいはずのゴルフが楽しくなくなったりしないようにして、スコアを良くすることです。

 アンガーマネジメントの具体的な方法には次のようなものがあります。

◎6秒ルール
 怒りを感じる出来事が起きたら、6秒間やり過ごしましょう。怒りホルモンと呼ばれるノルアドレナリンが多く分泌されるのが最初の6秒だといわれているからです。ゴルフでは、アマチュアが一打にかける時間は、ティーショットで平均16.97秒、セカンドショットでは平均14.81秒で、半数以上が10秒台だったという調査結果が出ています。つまり一打にかける時間の約半分から3分の1といったわずかな時間をやり過ごせれば、怒りは軽減されるということです。ミスショットしたら、いつまでもそのことを考えず、6秒数えて次のショットへと意識を向けましょう。

◎怒りメーター
 怒りのコントロールが難しい理由の1つが、怒りが目に見えないことが挙げられます。そこで怒りを可視化します。可視化することで今の怒りを客観的に見ることができ、そのことで冷静になることができるからです。可視化の方法は次の通りです。

 まず、人生最大の怒りを10とし、怒りのない穏やかな状態をゼロとします。そして車のスピードメーターか温度計のようなモノを思い浮かべてみましょう。怒りを感じたその瞬間、ゼロから自分の怒りメーターがどこまで振れているかをイメージします。数値化すると、多くの怒りは意外と低い(大したことない)ことに気付くことができます。一度や二度のミスショットは大したことありません。そのことに気付ければ次のショットに集中することができ、すぐに挽回できるでしょう。

◎三重丸
 前の組はもっと迅速にプレーすべきだ、とか、もっとマナー良くすべきだ、といった「~べき」の許容範囲を広げてあげれば、怒りは軽減します。まず三重丸をイメージします。その一番中心の円が、「問題ない範囲」、つまり自分の「べき」と同じ状態です。次の円が「まあ許せる範囲」です。自分の「べき」とは少し違うものの、まあまあ許せる状態です。一番外側の円が「許せない範囲」です。

 このうちの2つめの円を広げることで、怒りやイライラを軽減させることができます。また2つめの円の境界線を明確にすることで、怒る必要のある事象と、そうではない事象とを明確に区分けすることができます。境界線が明確になれば、それを相手に伝えることもできるようになります。相手に伝え、理解してもらう努力も時には必要でしょう。

 いかがですか?これらアンガーマネジメントの手法は即実践でき、高度なメンタルトレーニングも必要ありません。ぜひ実践してほしいと思います。アンガーマネジメントで自分を変え、ゴルフもビジネスも、そして人生も楽しみましょう。

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執筆=小森 剛

執筆=小森 剛ゴルフハウス湘南

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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