プロ野球に学ぶ中途採用術(第3回)

悲劇のエース小林繁から学ぶ“大物”人材の採用法

2016.01.18

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 プロ野球のトレード事例から、中途採用を成功させるポイントを学ぶシリーズ。今回は、すでに申し分のない実績や経歴を有する人材を中途採用するにあたり注目すべき点を、超一流選手だった松永浩美氏、小林繁氏の2例から紹介する。

大物のトレードは難しい。ある実力派トレードの大失敗

 中小企業が飛躍を期して、実績のある経験者を採用するケースがある。しかしそれまで勤務していた企業と新たに入社した企業では、ビジネスのやり方や求められるスキルが異なることなどから、うまく実力を発揮できずに早期に退職してしまうケースも少なくない。

 プロ野球界においてもビジネスの世界と同様に、これまでの実績を買われ他球団から移籍してきたにもかかわらず、新天地で結果を残せずに、早々に退団してしまうことがある。その典型的な事例の1つが、1992年のシーズンオフに行われた、オリックス・ブルーウェーブ(現・オリックス・バファローズ)松永浩美氏と、阪神タイガース・野田浩司選手の交換トレードだ。

 当時の松永氏は、パ・リーグを代表する名バッターだった。1981年、オリックスの前身である阪急ブレーブスで一軍デビューを果たすと、1983年以降は、10年連続で2割8分以上の高打率を残した。1991年には首位打者こそ逃したものの、トップの高沢秀昭選手(ロッテオリオンズ所属、現・千葉ロッテマリーンズ)にわずか4毛差で2位につくデットヒートを繰り広げた。また、右利き、左利きのどちらでも高い打率を残したことから、“史上最高のスイッチヒッター”とも称されるほどであった。

 阪神ファンの期待が高まる中、松永氏は開幕戦で5打数5安打と最高のスタートを切った。しかし、2戦目に左足太ももを痛めてしまうと、6月には右肩を痛めて登録抹消。その後も大きな活躍をすることなく、不本意なシーズンの終わりを迎えた。チームも前年の2位から2つ順位を落とした4位で終わった。

 そして移籍後わずか1年で、日本プロ野球界に導入されたFAの第1号として権利を行使。地元である福岡のダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)に移籍した。

 一方で、阪神を去った野田選手はオリックスで大活躍。チーム最多勝となる17勝を記録し、阪神に在席した5年間で最高11勝だった自身の成績を大きく更新した。野田選手は続く2年目、3年目にも10勝以上の成績を上げ、阪神にとっては、まさに大失敗のトレードとなった。

 実績のあるベテラン選手には、第1回で紹介した矢野氏のように、控え選手がレギュラーにのし上がろうという意欲や、第2回の真弓氏のように、一流の仲間入りをしたばかりで、これから人気者になりたいという強い意欲はない。松永にやる気がなかったわけではないにせよ、矢野氏や真弓氏のような「さらに上を目指す」執念があったかというと疑わしい。

 それでは実績のあるベテラン選手のトレードを成功させるポイントはどこにあるのか。その答えを、宿敵・巨人から阪神に移籍した小林繁氏のトレードを例に見ることができる。

“空白の一日”をついた前代未聞のトレード… 続きを読む

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執筆=峯 英一郎

執筆=峯 英一郎studio woofoo

ライター・キャリア&ITコンサルタント。IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行う。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。

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