技術TODAY(第13回)

必修化対応進む、子ども向けプログラミング教育

2018.02.16

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 2020年度から必修化される小学校での「プログラミング教育」。全国各地でユニークなトライアルが進められている。ICTの進歩が続く現在、必修化によってどのような教育的効果が得られるのだろうか。

 文部科学省では、「プログラミング教育とは、子どもたちに、コンピューターに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むこと」と説明している。

 政府は、このためには幼少期からのプログラミング教育が必要だとして、必修化に向けた検討を開始した。総務省では、クラウドや地域の人材を活用したプログラミング教育の実施モデルとして全国24の学校を選定。平成28年度から実証事業を行っている。その1つ、大阪府・寝屋川市での取り組みを紹介しよう。

小さな「たこ焼きロボット」操作で学習

 モデル校となった市立石津小学校の児童が使うのはタブレットと、小型ロボットの「Ozobot」だ。外見が「たこ焼き」に似ていて、子どもたちからは「たこ焼きロボット」と呼ばれている。このロボットは、底面にあるセンサーで線の色を読み取りながら動く。専用ツールを使って進行方向や速度などの動きを制御できる。

 授業はメンターと呼ばれる15人の若者が中心になって学級担任とともに進める。彼らの多くは、小学校近隣エリアに在学中の大学生だ。寝屋川市とともに本事業を手がけるNTT西日本、キャスタリア、上越教育大学はメンターの募集、育成を行うとともに、子どもたちが楽しみながら、社会におけるプログラミングの役割を学べるカリキュラムを構築する。このカリキュラムに基づき、石津小学校の5年生2クラス、62人が放課後学習(教育課程外)を受講した。

 全5回の講座では、初めにプログラミングの意義や役割を考えさせる。さらに、問題解決の方法を意味する「アルゴリズム」との違いを解説する。次にプログラムの構造を理解し、簡単なプログラムを作成。ロボットを正しく走行させる中で、学んだ知識を身に付けさせる。

共同作業と試行錯誤で生まれる「楽しさ」

 講座開始に先立ち、指導を統括するメンターが課題の説明を行う。電子黒板を使って「プログラムとは何か?」「プログラミングでどんなことができるのか?」などを解説し、使用するロボット、タブレットの操作方法を示す。子どもたちの多くはこれまでプログラミングの経験がない状態だったが、小型でかわいい「たこ焼きロボット」や、キーボードを使わず直感的に操作できるツールに興味を持つ。積極的に質問する姿も見られるという。

 続いてクラスを3~4人ずつの班に分け、紙に書かれた“池”の周りをロボットが1周するプログラムの作成に取りかかる。走行にはタブレット上で命令ブロックを組み合わせて、ロボットに読み込ませる。方向転換の命令自体は単純なものだが、1周するには工夫がいる。

 講座の後半では、ロボットが「たこ焼き」の材料を集めながら格子状のコースをゴールに向かうというストーリーの下、道に描かれた色を識別して走行するプログラムが課題となる。「次の交差点の色が赤なら左折」「到着したら虹色に発光」といった動作を1つずつプログラミングするのは大人にとっても簡単な作業ではない。だが、子どもたちの理解力は総じて高く、それぞれの班がユニークなコースを作る。

 今回の試みについて、石津小学校の森本朋美校長は「トライ&エラーを繰り返しながら最善解を求めるプログラミング教育は、非常に可能性のあるものだと感じた」と語る。子どもたちからも「これで終わりなのは寂しい」「将来ロボットを作ってみたい」といった意見が寄せられ、教育方法として大きな成果を上げているといえる。

 ロボットを用いた教育は、ともすれば技術者を育てるための教育として受け取られがちだ。しかし、冒頭に解説した通り、文部科学省が示す方針では、プログラミング教育はコーディングなどの技術を学ぶためのものではない。さまざまな課題解決の方法として必要な手順や動作を学び、どうすれば解決できるのかを考える「プログラミング的思考」習得が目的だ。

必修化に向けさらなる環境整備

 必修化による教育的メリットに対して期待を寄せる声が高まる一方で、気になる調査結果も報告されている。一般社団法人コンピューターソフトウェア協会(CSAJ)が2017年10月に行ったアンケートによると、対象となった小中学校の教職員(77校、326件)の6割以上が「ICT教材、ネットワーク環境の不足」を不安視しているのが明らかになった。実際、寝屋川市においてこの実証実験が実施可能だったのは、すでに市内小中学校全校にWi-Fi環境が整備され、タブレットや電子黒板といったICT機器の情報インフラが整備されていたからだ。

 また、「授業時間の確保」も大きな課題だ。小学校では2020年度に英語の必修化が予定されている。これに加えて、プログラミング教育の授業を行うのは困難だとする意見もある。文部科学省は、新たな教科として扱うだけでなく、既存の授業でもプログラミング的思考を養うことをめざしたいとしている。

SID : 00093013

執筆=林 達哉

執筆=林 達哉

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